森垣岳さんの短歌が、朝日新聞の天声人語欄に紹介されていました。
生物工学が専門の森垣さんの独特のモチーフの短歌は、新鮮ですがすがしい作品です。当ブログにてもご紹介させていただきますね。
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「天声人語」欄に森垣岳さんの短歌
今日の天声人語欄には、一風変わった短歌が紹介されていました。
詠み手は森垣岳(もりがきたけし)さん。
第23回短歌現代新人賞、第2回現代短歌社賞他を受賞されており、歌集『遺伝子の舟』を上梓されています。
森垣岳さんプロフィール
森垣さんは、現在36歳、兵庫県立農業高校の先生をされています。
専門は生物工学。一方、大学での大学での専攻は園芸学だそうです。
「歌をスマホに打ち込む」というのも今風の方法ながら、
「短歌を作り始めたのは社会に出てから。大学での専攻は園芸学で、文学は勉強したことがありません」
とお話しです。
何のきっかけで歌を詠まれるようになったのでしょうか。興味深いですね。
短歌の風景は学校の授業が主なものですが、歌に詠み込むものが独特で新鮮であり、天声人語では「歌の多くに理系ならではの感性が光る」と評されていました。
森垣岳さんの短歌
天声人語中に紹介された短歌は
水槽のナマズは動くこともなく居残る生徒が笑いだしたり
男らがビニールハウスに集まりてファレノプシスの花と受精す
友人の少ない生徒サイダーのビンに小さき蛇入れて来る
一モルの酸素を吸えば満たされて我も大気の一部と思う
烏(からす)より黒き和牛が売られゆく生徒の群れに手を振られつつ
植え込みのまばらに枯れたツゲの木と劣等生に親しみを持つ
紹介された短歌には、いずれも「理系」のモチーフが詠み込まれおり、森垣さんの関心の方向を指し示します。
しかし、「理系モチーフ」以上に、指導の対象である生徒が主題であることは言うまでもありません。
実験対象にするのだろう、動物や花木に注がれる視線が、生徒にも温かいまなざしとなって注がれていることが感じ取れます。
よく晴れた紙に数字が示されて15の君の未来定まる
この紙に示されている番号の生徒以外は通るべからず
出席簿に欠席なしと記しおく やがて奇跡の日々と知らずに
卒業アルバム閉じてここから先にある広き海原帆を立ててゆけ
また、教師としての日常や豊富も素直に詠まれています。
新しい通学用の靴を履き桜の花を踏みしめてゆく
あかあかと林檎(りんご)の果肉鮮やかな熱意のごとく教師なるべし
六月の若葉の茂る樹に寄りて「これはいつしか大樹とならん」
取り損ねて牛舎の前まで転がったボールも君は拾ってくれる
いずれも、みずみずしく新鮮で、素晴らしい短歌の数々です。
どうぞ歌集をお手に取ってご覧ください。
森垣岳 もりがきたけし 1982年生まれ。大学卒業後に短歌を始める。第23回短歌現代新人賞、第2回現代短歌社賞、兵庫県歌人クラブ新人賞。ヤママユ短歌会所属。