長塚節の伝記小説「白き瓶」藤沢周平  

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長塚節の伝記小説「白き瓶」藤沢周平

2018年2月3日

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「土」を書いた長塚節(ながつかたかし)はアララギを代表する歌人の一人です。

長塚節の伝記を小説として藤沢周平が書いた「白き瓶(かめ)」という本があります。著者は時代小説家の藤沢周平。

本の内容と藤沢周平の人となりについてご紹介します。

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ママハハと「普通が一番」

藤沢周平は時代小説家で、その頃はまだ、テレビで映画を見たことがある程度でした。

しかし、新聞に藤沢周平の娘さんの遠藤展子さんが書いたエピソードが印象的で忘れられませんでした。

展子(のぶこ)さんは生まれて間もなくお母さんを亡くされ、五歳で新しいお母さんを迎えたといいます。

 

幼稚園の頃のある日、近所のおばさんに「ママハハだから大変だね」と言われた。帰ってお母さんに「ママハハってなあに?」と訊いたらお母さんは答えた。

「ママハハっていうのはね、ママと母と両方だから、普通のママより二倍すごいママなのよ」

藤沢周平は「普通が一番」と、生涯言っていたということも展子さんは、折々に伝えています。

藤沢はどのような人だったのか、そこから興味をそそられました。

 

藤沢周平の前半生

藤沢氏は農村に生まれ、若い頃結核にかかり、俳句の経験があります。

職が定まらなかったあと、純文学から後に時代小説に転向。結核は回復するも、一子を得て二十八歳の妻と死別するという悲しい出来事にみまわれます。

それだけでもたいへんな半生だったと思います。

「白き瓶」の主人公長塚節との重なり

「白き瓶」の主人公長塚節も、結核に罹患して亡くなります。そして、病気になったことで婚約者を失います。

おそらくそれば藤沢の体験に重なるところがあったのでしょう。

本の折々にある慟哭は、むしろ、藤沢氏自身について思いを馳せたくなるような小説なのです。

 

手を当てて鐘はたふとき冷たさに爪叩き聴く其のかそけきを
長塚節

藤沢周平の常のファンからすると、「白き瓶 小説 長塚節」は読み通すのがたいへんであるらしいです。

登場人物のほとんどが歌人、歌の引用や歌論のエピソードが多いためと思いますが、短歌に興味がある人にとっては、既知の人物がどう書かれているか、その点が存外おもしろい点ではあります。

長塚節については下の記事に

長塚節について

「白き瓶」のタイトル

本のタイトルは長塚節の下の短歌から採られています。

白埴(しらはに)の瓶(かめ)こそよけれ霧ながら朝はつめたき水くみにけり

長塚節の歌の代表作と言われる「鍼の如く」の中の一首よりとられたもの。

小説は、小説「土」の作者でもある家人長塚節の作品を年代順に追ってもおり、短歌好きな人にとっては、読み応えのある一冊となっています。

長塚節の短歌については下の記事で読めます。
根岸庵 ゆく春~長塚節初期の短歌




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