月の短歌 現代短歌より  

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月の短歌 現代短歌より

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月の短歌の数々、秋の夜、月を眺めた後に思い出すことがあります。

古い時代には月が詠まれた和歌もたくさんありますが、今回は短歌を詠まれる方の参考になるように、現代の短歌から選んでみました。

作者は歌人の前登志夫、 岡井隆、佐佐木幸綱 、三枝昴之、花山多佳子、 小島ゆかり、吉川宏志他。敬称は略します。

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月の短歌

月は古くから歌人たちによって詠まれてきました。

現代短歌より月の短歌をご紹介します。

古い時代の和歌は

月を詠んだ和歌・名歌 万葉集と古今和歌集より

月の有名な和歌 新古今集と百人一首より

 

片削ぎに月のひかりをあびて鳴る裸木高くすさまじくあり

作者:坪野哲久 『碧厳』

当初は島木赤彦に師事し、プロレタリア運動にも参加した歌人。
「北の人らしい厳しい骨太な歌、頑固でたけだけしい美しい歌」が特徴です。

 

青々と月はなべてにうるむ如野のかげにして涸れて行く沢

作者:近藤芳美 『歴史』

朝鮮戦争の頃の歌。朝鮮に生まれた作者は故郷の荒廃を嘆き、その心境を仮託したと思われます。

 

月と日と二つうかべる山国の道に手触れしコスモスの花

作者:岡部桂一郎

モダニズムの歌人ですが、素直に美しい情景です。

 

月の夜となりゆく空の明るさが昨(きぞ)と同じくわが窓を占む

作者:宮英子

戦時の歌。夫君を戦争に送ったわけですが、おそらくその変わらぬ思いを詠ったのでしょう。

 

萩に照る月の出おそしあくがるる晩年にこそ神隠し来め

作者:前登志夫  『青童子』

「来め」とは「来ん」と同じ未来「~だろう」の意味。

晩年に月の照る日に神隠しに会って生を終えたいという、自然に即した環境にある作者の幻想的な願いが詠われます。

 

月きたり射せば怯ゆる花群の照らされている白きむらがり

作者:岡井隆 「朝狩」

この前後の歌を含めて、エロス的なメタファーがあるように思います。

 

月高く天上に照り時遷(うつ)るいづくにか這ううつしみの影

作者:来嶋靖生 『肩』

他にも

怯みなく鳴けやこほろぎ空に照る月は無償の光を放つ
知らぬこと得見えぬもののあまたありまなこ洗はむ月の光に
濁る世を機通りてはきほひたちし日々よみがへる月にむかげば
月扇ぎ時を忘れてゐしわれかかそけき風の頬に触(ふ)れて過ぐ

 

月射せばすすきみみづく薄光りほほゑみのみとなりゆく世界

作者:小中英之『わがからんどりえ』

この作者の良く知られた歌。
「歌のまわりは、つねに静寂であってほしいと思うし、言葉も静寂の中から生まれてくる」と後記の作者の言葉があります。

 

月下の浜に朽ちゆく船の影ぞ漕ぎ出ずるなき一生(ひとよ)悲しめ

作者:佐佐木幸綱 『夏の鏡』

他に「言葉とは断念のためにあるものを月下の水のきらら否定詞」のように、作者は月下の風景に惹かれたようです。

 

月鋭しと階下に立ちし声ありてわれは心に鋭き月を見る

作者:三枝昴之 『甲州百目』

岡井隆が、この一連について「家族がうたわれているがそれは安心して詠われているわけではない。淡々と歌われているように見えて、その底にある現代人の生活感情の不安とか無常感がおだやかな修辞に包まれている」と評しています。

 

月光に濡れてとどろくコンバイン小麦十町歩獲り終はりたり

作者:時田則雄 『北方論』

北海道の広大な土地を耕す作者。

十町歩という畑一面の小麦を刈る一日の作業が終わるころには、大地にも農機具にも月が照っているのです。

 

月光のはだざはりよき春の暮れみづみづと夫を男とおもふ

作者:松平盟子  『シュガー』

月の光に人との接近も生まれます。エロスというよりも、夫婦としての心情の変化。

他に「ひそやかに月が痩せゆく寒の夜母のレエレジー聴けよふたり子」も離婚にともなう真情を月の形態の変化に託して表しています。

 

あとずさりあとずさりして満月を冬の欅の梢(うれ)よりはなす

作者:花山多佳子  『空合』

自分の立っている位置を変えることで満月の位置が変わっていく、その情景です。

歌人も詩人も、こうして自分の身態風景を手に入れるのでしょう。

 

月読に途方もなき距離照らされて確かめにいくガスの元栓

作者:渡辺松男 『寒気氾濫』

「月読 つきよみ」は月の古語。

思わぬところまで月の光が明るく射していることに、普段と違った時間に行動することで気がつくことがあるのです。

 

まろやかに月の光の降(くだ)り来て川押し上げる春の潮は

作者:内藤明  『海界の雲』

月の光の下、それに感応するかのような春の海の力ある潮の流れ、大いなる自然の姿です。

 

まつぶさに眺めてかなし月こそは全き裸身と思ひいたりぬ

作者:水原紫苑 『びあんか』

「作者の存在の分身としてこの裸身の月は、痛々しくかつほのかなエロチシズムさえ帯びている」と小島ゆかりさんの評があります。

 

月ひと夜ふた夜満ちつつ厨房にむりッむりッとたまねぎ芽吹く

作者:小島ゆかり『希望』

よく知られた歌。擬音が印象的です。

 

鍵をした窓から月の光差し君はいっぷう変わった壜だ

作者:吉川宏志  『青蝉』

月の光に照らされて普段は見えないものが、不思議な魅力と存在感をもって見えてくることを教えてくれる歌です。

 

月を詠んだ現代短歌はいかがでしたか。思えば、月は毎夜空にあって、いつでも詠むことができる題材です。

今夜は空を眺めてみてくださいね。

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