秋風の短歌 古今集と万葉集から思う人に会えないわびしさと切なさ  

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秋風の短歌 古今集と万葉集から思う人に会えないわびしさと切なさ

2018年9月18日

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「秋風」をモチーフにした短歌は古くからあります。

今日のテーマ別短歌は、同じ古今集の時代を周辺に「秋風」をモチーフにした短歌を集めてみました。

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秋風の短歌

今朝のことば検定で取り上げられたのは次の歌です。

秋風は身をわけてしも吹かなくに人の心のそらになるらむ 

作者:紀友則
出典:古今集

【歌の意味】秋風は人の身を分けて、心の中まで入り込むわけではないのに、秋になると、あの人の心の中に「飽き」の風が吹いて、私への思いがうわの空になってしまうのは、どういうことだろう。

秋風の秋は、この場合「飽き」と通じているそうで、この時代の歌のテクニックの一つ、掛詞となっています。

 

秋風の吹きにし日より音羽山峰のこずゑも色づきにけり

作者:紀貫之
出典:古今集

【歌の意味】秋風が初めて吹いた日から、その音がしていた音羽山の峰の梢も色づいたのだったよ

注:下の山上憶良の歌の本歌取りと思われます。

 

あはれまたけふもくれぬと眺めする雲のはたてに秋風ぞ吹く

作者:藤原定家
出典:新古今和歌集

【歌の意味】ああ今日もまた暮れてしまったとながめる雲の果てに秋風が吹く。

素直に整った美しい歌です。

 

万葉集から秋風の歌

秋風の寒さが、人を待つ身の切なさと結びついたものが多いです。

君待つと我が恋ひ居れば我がやどの簾動かし秋の風吹く

作者:額田王

【歌の意味】あなたを待って恋しく思っていたら、あなたと見まごうかのように私の家の簾を動かして秋風が吹くのです

万葉集における秋風の代表的な歌です。

 

秋風の吹きにし日よりいつしかと我が待ち恋ひし君ぞ来ませる

作者:山上憶良
出典:「万葉集」巻八

【歌の意味】秋風の吹いた日からいつかいつかと、私が恋いて待っていた君がいらしゃった。

注:この歌では、到来した秋風のさわやかさと、慕う相手とを並置しています。

 

今よりは秋風寒く吹きなむをいかにかひとり長き夜を寝む

作者:大伴家持

【歌の意味】これからは、秋風がいよいよ寒く吹く季節になるが、そんな秋の長い夜を、一人で過ごすのはつらいことだ

家持が妻を失って詠まれた歌だそうです。下にもう一首。

 

うつせみの世は常なしと知るものを秋風寒み偲ひつるかも

作者:大伴家持

【歌の意味】この世の中が無常だとはかねて知っていたが、それにしてもこの秋風が寒い夜に、失った人が偲ばれることよ

まとめ

秋風の歌から、目に入ったものを挙げてみました。

古くから秋風をモチーフにこんなにもたくさんの歌が詠まれていたのですね。

秋の気配を感じながら、その流れに連なる歌を私たちも詠んでみようではありませんか。

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