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秋の短歌 有名な新古今集の和歌と現代短歌から 紅葉 田 月 吾亦紅 萩 葡萄

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こんにちは、まるです。
暑い夏、9月に入って台風や地震を憂いているうちに、一気に秋が近づいてきてしまったようです。
皆さんのお住まいの地域では、秋の兆しがみられていますか?

さびしくものがなしく、しかし美しい秋の季節は古くから短歌にもたくさん詠まれています。
今日は和歌と近代短歌から、秋の短歌をご紹介します。

 

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『古今集』の和歌から秋の歌

最初は古今集の時代の、有名な秋の歌を紹介します。

見わたせば 花も紅葉(もみぢ)もなかりけり 浦の苫屋(とまや)の 秋の夕暮れ

作者:藤原定家
出典:
新古今和歌集

現代語訳:

見渡してみても花も紅葉も見えないことよ。この海辺の苫ぶきの粗末な小屋のあたりの秋の夕暮れの景色には

 

秋の田の かりほの庵の 苫(とま)をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ

作者:天智天皇
出典:『後撰集』

現代語訳:

秋の田のほとりの仮小屋の、屋根を葺いた苫の編み目が粗いので、私の衣の袖は露に濡れていくばかりだ。

 

月見れば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど

作者:大江千里
出典:『古今集』

現代語訳:

月を見れば、様々に思いが乱れて悲しいものだ。別に私一人のために秋がやってきたというわけでもないのに

関連記事:
月の短歌 現代短歌より前登志夫 岡井隆 佐々木幸綱 三枝昴之 花山多佳子 小島ゆかり吉川宏志他

 

秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる

作者: 藤原敏行朝臣
出典:古今集

現代語訳:

秋が来たといって目にはっきりと見えるようなものは何もないのだが、ただ風の音が秋めいていて、心が揺れるのだ

 

近代短歌から秋の歌

ここからは近代短歌からです。

おりたちて今朝の寒さを驚きぬ露しとしとと柿の落葉深く 

作者:伊藤左千夫

伊藤左千夫の代表作ともいえる「寂(ほろ)びの光」の冒頭の歌です。
老年に差し掛かった自分の境涯と重ねて、秋への急激なうつろいを詠んだ一連です。

関連記事:
伊藤左千夫短歌代表作30首 牛飼の歌 九十九里詠 ほろびの光

 

馬追虫(うまおひ)の髭(ひげ)のそよろに来る秋はまなこを閉ぢて想ひ見るべし 

作者:長塚節

現代語訳と歌意:馬追虫(うまおい)の長く繊細な髭のように、かすかな気配でやってくる秋は目を閉じて、こころを澄ませて感じとるものだ

秋が虫の髭にやってくるという、作者の繊細さが感じられる歌です。

 

秋浅き木(こ)の下道を少女(おとめ)らは おほむねかろく靴ふみ来るも 

作者:中村憲吉

秋になったばかりの良い気候の林の道を楽しそうに通う少女の姿を細かくとらえています。
このような感覚的なとらえ方がこの作者の独特なところです。

 

秋日ざし明るき町のこころよし何れの路に曲りて行かむ  

作者:窪田空穂

秋のすがすがしい気候と楽しい心持を詠っています。

 

罪びとのごくに坐して妻とふたり秋夜(しうや)の骨を守らむとする 

作者:木俣 修

作者は残念ながら6歳で愛児を病気で失いました。その悲しみを詠う歌をたくさん作っています。

 

秋分の日の電車にて床にさす光とともに運ばれて行く

作者:佐藤佐太郎

日が傾いてきて、電車に差す秋の光の美しさ。運ばれるのが人ではなくて光に焦点を当てたところがこの歌の新しさです。

 

人を瞬(またた)かすほどの歌なく秋の来て痩吾亦紅 それでも咲くか 

作者:斎藤史

歌を詠む人にとっては、クスリと笑ってしまうような歌です。
人の気を引くような歌ではなく、地味で線の細い、吾亦紅のような歌しかできないが、それでも歌を詠もうということが、咲く花にたとえられています。

 

関連記事:
吾も亦(また)紅なりとひそやかに~吾亦紅われもこう一茶と虚子 吾亦紅の現代短歌


 

大江山桔梗刈萱吾亦紅 君がわか死われを老いしむ 

作者:馬場あき子

能に通じていた作者。「大江山」の謡にある。「頃しも秋の山草、桔梗刈萱破帽額(ききょう、かるかや、われも こう)。 紫苑といふは何やらん。鬼の醜草とは、誰がつけし名なるぞ」が詠み込まれています。

舞台では、この後に山伏に盃を勧める場面となりますが、そこで亡くなった君に語りかけるかのような作者の述懐が交錯します。

 

白萩に白萩こぼるるひるつかた遠くまで陽が照り追憶に似る 

作者:河野 裕子

萩の花は秋を代表する花。たくさんの小花をつけるため、一つがこぼれると下の花にもかかります。
そちことで、ほろほろとこぼれる花に陽が射して、どこかで見た景色のような、追憶を掻き立てるような光景だという、美しい歌です。

 

ひとふさの葡萄をはみて子のまなこ午睡ののちのひかりともり来 

作者:花山多佳子
昼寝をしていた子が、まだ寝ぼけまなこでブドウを食べているが、一房を食べ終わるころには、目に力が戻ってくる。
その微細な変化をとらえています。

関連記事:
葡萄の短歌 斎藤茂吉 塚本邦雄 馬場あき子 寺山修司 岡井隆

 

まとめ

古くからある有名な秋の歌、目に入ったものや好きな短歌を挙げてみましたが、いかがでしたでしょうか。

皆さんも季節の変化に目を向けてみて、秋を感じさせる歌をぜひ詠んでみてくださいね。

 

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