短歌

若山牧水の秋の短歌二首 白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけれ

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こんにちは、まるです。

家の脇に不思議な虫を見つけたので写真に撮りました。これまで一度も見たことのない虫です。

皆さんは何という虫かご存知ですか。

調べてみたら、「アオマツムシ」というのだそうです。

そこで若山牧水の虫の音が出てくる短歌を思い出しました。

 

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ちんちろり男ばかりの酒の夜をあれちんちろり鳴きいづるかな

この歌は若山牧水の第一歌集『海の声』にあるものです。「紀の国青岸にて」と付記があります。

歌の背景

牧水が早稲田大学4年生の時、最後の夏休みを故郷で過ごし、8月末に東京へ帰る途中のことです。
神戸から大阪、和歌山、奈良と旅をしながら9月10日に帰京。

この歌はその旅の、和歌山に滞在した際の作品と考えられます。
若山牧水を迎えるために、文学仲間が集まって、酒席となったのでしょう。

そこで、ふと牧水の耳に虫の鳴き声が聞こえ、「あれ、ちんちろりんが鳴き出したぞ」と耳を澄まして聞いている。

その鳴き声こそが、マツムシの特徴ある鳴き声です。

季節は初秋。秋の夜の旅の途の酒は牧水にとってはおいしかったのではないでしょうか。

しかも男ばかりの酒の夜は時折静かであって、庭先の草むらからマツムシの美しい声が聞こえてくる。

「ちんちろり」と唐突に虫の鳴き声で始まる短歌は、牧水がそれを耳にした状況そのものであり、まさに突然「鳴き出した」ことの描写でもあります。

「あれ」は、そのまま、「あれ」「おや」といった注意を向けた様子。

そして、「鳴き出づるかな」の結句が、「男ばかり」につながって、その場の様子がわかるように収められています。

 

白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけれ

同じく秋の夜の酒の短歌。しみじみとした秀歌で有名なものです。

「白玉の」は枕詞ですが、この場合「白い歯」ということで、その白い歯にすら沁みとおるような味わいの秋の夜の酒は、心静かに飲んでその風情を楽しもう、という意味の歌。

牧水は酒が好きであり、後年の娘の述懐によると、きわめて「きれいな酒」だったということで、酒宴のようなにぎやかなものよりも、まさに酒をたしなむような飲み方を好んでいたのかもしれません。

表現技法としては、「白玉の」「しみとほる」「しづかに」と「し」を3回重ねており、歌の内容にもふさわしく美しい調べでまとめています。

まとめ

秋の夜は虫の声に耳を傾けながら、静かな心持ちにて歌を詠んでみたくもありますね。

もちろん、お酒の好きな方は、どうぞたしなまれてください。

 

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