萩原慎一郎の短歌作品集『滑走路』いじめと非正規雇用を詠む  

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萩原慎一郎の短歌作品集『滑走路』いじめと非正規雇用を詠む

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萩原慎一郎さんの短歌の紹介が、今朝の新聞に載っていました。

非正規雇用の苦しみや、いじめの体験がテーマの萩原慎一郎さんの短歌についてご紹介します。

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萩原慎一郎 いじめと非正規雇用が主題

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萩原慎一郎さんは、中学校、高校と続く学校でのいじめに悩んでいましたが、俵万智に出会って短歌を始めます。

その後、早稲田大学で学びますが非正規雇用に悩み、32歳で自死にて亡くなりました。いじめの際の精神的不調があって、それが原因でもあったようです。

歌集は亡くなる半年ほど前に、出版社に話をしていたようです。亡くなった後に刊行されて、多くの人たちの共感を呼びました。

そのため、普通の歌集の200倍とも言われる売れゆきになったそうです。

テーマの多くは、いじめの体験、そして、非正規雇用の体験です。

※23年3月14日のクローズアップ現代でも取り上げられました。

NHKクローズアップ現代 短歌特集の内容 歌人と作品

 

萩原慎一郎さんの短歌作品

萩原慎一郎さんの短歌作品を紹介します。

いちばん良く引用されるのが下の歌です。

ぼくも非正規きみも非正規秋がきて牛丼屋にて牛丼食べる

作者:萩原慎一郎

出典:歌集「滑走路」

非正規雇用を詠む

非正規の友よ、負けるな ぼくはただ書類の整理ばかりしている

頭を下げて頭を下げて牛丼を食べて頭を下げて暮れゆく

夜明とはぼくにとっては残酷だ 朝になったら下っ端だから

東京の群れのなかにて叫びたい 確かにぼくがここにいること

単に非正規雇用だけの歌というだけでなく、働く人なら誰しも共感のポイントはありそうです。

編集者によると、

「著者と同世代の非正規雇用者とその親の世代に読まれている。やさしさに心打たれるという感想が多い」

とのこと。

コピー用紙補充しながらこのままで終わるわけにはいかぬ人生

非正規という受け入れがたき現状を受け入れながら生きているのだ

「非正規という受け入れがたき現状」この部分に関しては、同じ非正規の人の共感を呼ぶ部分であると思います。

いじめを詠む短歌

そして、非正規以前に遭遇した「いじめ」。

そのために野球部も退部せざるを得なくなったというつらい経験も詠まれています。

屑籠(くずかご)に入れられていし鞄(かばん)があればすぐにわかりき僕のものだと

現実に食われてしまいし夢もあり グローブ捨てて鉛筆握る

「仲間」への共感

また、他の非正規雇用の人や、働く人たちへのあたたかな視線もあります。

いろいろと 書いてあるのだ看護師の あなたの腕はメモ帳なのだ

牛丼屋 頑張っているきみがいて きみの頑張り時給以上だ

「研修中」だったあなたが「店員」になって 真剣な眼差しがいい

恋愛の歌

そして、ほのかな恋愛の歌も。

作業室にてふたりなり 仕事とは 関係のない話がしたい

遠くから みてもあなたとわかるのは あなたがあなたしかいかないから

かっこよくなりたい きみに愛されるようになりたい だから歌詠む

この歌集の中では、やさしさの際立つ作品です。

風景

お勤めをしていると、「社会」の意識も生まれてきます。

満員の電車のなかで 群衆の一部となっている俺がいる

箱詰めの社会の底で潰された 蜜柑のごとき若者がいる

大勢の中での自分の立ち位置という意識が、比喩で表現されます。

祈り

祈りのような次の歌に、心を打たれる方も多いことでしょう。

癒えることなきその傷が癒えるまで癒えるその日を信じて生きよ

あらゆる悲劇咀嚼しながら生きてきた いつかしあわせになると信じて

生きているというより生き抜いている こころに雨の記憶を抱いて

何か必死に探す事 恰好悪い事じゃないんだ。暁の方へ

 

そして、この歌集のタイトルとなったのは次の歌です。

きみのため用意されたる滑走路きみは翼を手にすればいい

たくさんの方の力となるだろう歌の数々です。

ぜひ歌集をお手に取ってご覧ください。

歌集「滑走路」のアマゾン紹介文

NHKニュースウオッチ9で「『非正規』歌人が残したもの」として紹介され、大反響。 いじめ、非正規雇用……逆境に負けず それでも生きる希望を歌い続けた歌人がいた。 32歳で命を絶った若き歌人の絶唱を収めた短歌集。




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