ハロウィンと観光客の喧騒を離れて 毎日歌壇の短歌11月5日号  

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ハロウィンと観光客の喧騒を離れて 毎日歌壇の短歌11月5日号

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こんにちは。まる @marutankaです。
毎日新聞の毎日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。
毎日歌壇は朝刊月曜日に掲載。当記事は、11 月26日の掲載分です。

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毎日歌壇とは

毎日歌壇についての説明です。
「毎日歌壇」とは毎日新聞朝刊の短歌投稿欄です。俳句は「毎日俳壇」です。
新聞の短歌投稿欄は、どの新聞においても、誰でも自由に投稿できます。投稿方法の詳しいことは別記事「毎日歌壇」とは何か?毎日歌壇の紹介と他誌の短歌投稿方法と応募の宛先住所」をご覧ください。

米川千嘉子・選

青年をわれ演じれば妻もまた乙女を演じているサファイア婚 八幡市 会田重太郎

「サファイヤ婚」というのは、45年だそうだ。「演じれば」と作者は言っているが、そればかりでもないのでは。

 

腕の立つ研ぎ屋が来れば必ずにまずは己の指が傷つく 福岡市 古野美智子

面白い歌だが自分にも憶えがある。というか、そうなるのが怖いので、あえて研がない。

 

「お飲みんしゃい」どこの言葉か知らないが猫にミルクをやる時使う 神戸市 中野道雄

愉快な歌。何か声をかけたいが、猫の言葉はわからない。なので、そのようなどこかの言葉で話しかけたくなるのだろう。

 

夫行かぬ男女参画教室のレシピの品が陣取る夕餉 高松市 桑内繭

せっかくの「男女参画」なのだが、勢いづいているのは妻ばかりだということなのだろう。料理を覚えてほしいのは夫なのだが。

 

世の中は怖い人達ばかりなりそんな躾でよいものかしら 深谷市 村田利雄

迂遠で丁寧な言い方をしているが、いわゆる「親の顔が見たい」式なのだろう。

 

台風の荒れ狂ふ夜の池の蓮はみ出して田に点々と咲く 岩手 千葉英雄

言い表すに難しい稀な光景だ。池から田んぼのように身を乗り出すように蓮が咲いている。

 

「人身の事故で遅れのご迷惑」繰り返すのに痛みはなくて 京都市 日下部ほのの

最近はこの「事故」はあまりにも頻繁になってしまい、乗客は腹立たしくも、電車の遅れだけを気にするようになってしまったのだろう。鉄道会社はやはり「ご迷惑」といわなければならないのか。お互い生きている以上「ご迷惑」は避けられないのかもしれない。

 

伊藤一彦・選

世の中はハロウィン色に染まるころ染まることなき過疎地に旅す 池田市 黒木淳子

ハロウィンの歌は朝日歌壇にもあったので、併せてご覧ください。

朝日歌壇11月4日号 柿,栗,無花果,秋の実りの短歌

今一度洗濯したいこの国を龍馬の気持ち解るこの頃 川西市 那須三千雄

もしかしたら、龍馬の時よりも深刻ではあるまいか。そうでないとも言えまい。

 

土日には外出しなくなりました この街は観光客のもの 鎌倉市 佐々木眞

先日、鎌倉に行ってきたばかりなのだが、その前の浅草に続いて、とにかく外国人観光客が多い。地価が上がった地域も、そのためなのであって、「~もの」という結句は寂しさの極みだろう。

 

秋の虹さびしくあれば指さしてわれの中なるわれに見せおり 垂水市 岩元秀人

4句は写実では使わない表現だが、そういえば、「インナーチャイルド」などという言葉もあった。

 

君の少し鼻にかかったJet’aimeの調べ聴きたきこの星月夜 東京 樋下佐代子

初句が6音と字余りになっているが、茂吉は「滑活」になり過ぎるという時に、字余りも用いた。

 

よく晴れた空を見ながら笑ってるあなたの声とわたしの声が 堺市 一條智美

「あなたと私」ではなく双方の声とすることで、歌の中にいるはずの詠み手は乖離して、俯瞰の地点に立つことになる。不思議な効果だ。

篠弘・選

旧友と会う時だけは昼間から酒を呑むこと自分に許す ひたちなか市 衛藤美波

もちろん、いつ飲もうが定年後なら差し支えないのだが、あえて「~だけ」として、その時間の大切さを言い表している。

 

津波より七年間をながらえて傾く墓に妻をほうむる 岩手 千葉英雄

痛切な歌だ。震災を辛くも生き延びたのだが、その折傾いた墓に身内を入れねばならない。「ほうむる」はひらがなであることにも注目したい。

 

わが拳突きあぐるがに河骨(こうほね)の茎細くして黄の花ともす 大垣市 佐々木覚子

コウホネは、スイレン科の植物の1種。花を辛夷の形に見立てた。

加藤治郎・選

新しい道路はいつもまっすぐで、誰もがふざけあいたいだけで 大阪市 細見晴一

結句は「だけなのに」とつなぐ意味なのだろう。見通しの良い寄り道すらできない道路。そんなものは誰も望んではいないのだ。

 

死のうとし跨線橋から覗く貨車怖さに震え祖母の声聞く 久喜市 野川清

死んではだめだよ。死にたい気持ちを詠めばいい。たくさん歌ができるよ。

診てもらふだけで来たるにこの医院検査後すぐに補聴器勧む 埼玉 佐々木照

高齢者が多くなったので、耳鼻科も眼科も大盛況となっている。お医者は大喜びなのだろう。

まとめ

ハロウィンの短歌がここにも見られたが、時事詠は比較的少なかった。鎌倉を詠んだものには同感する。ではまた来週。

 




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