こんにちは。まる @marutankaです。
毎日新聞の毎日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。
毎日歌壇は朝刊月曜日に掲載。当記事は、12月3日の掲載分です。
毎日歌壇とは
毎日歌壇についての説明です。
「毎日歌壇」とは毎日新聞朝刊の短歌投稿欄です。俳句は「毎日俳壇」です。
新聞の短歌投稿欄は、どの新聞においても、誰でも自由に投稿できます。
投稿方法の詳しいことは別記事「毎日歌壇」とは何か?毎日歌壇の紹介と他誌の短歌投稿方法と応募の宛先住所をご覧ください。
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篠弘選
軽トラで駆けつけてきし若者がリーダーとなり泥掻き仕切る 瑞穂市 渡部芳郎
選者評「被災地の奉仕活動が話題となった一年であった。軽トラで駆けつけたという表現と<泥掻き仕切る>の結句が重い。」特選。
花の野につどいきたれる黄帽子らすっかり溶けて声だけ響く 名古屋市 浅井清比古
「溶けて」は、黄色の花に溶け込んで、の意味だろう。秋は泡立草や菊など黄色の花も多い。
孫と娘と訪ねたジブリ美術館カフェには藁のストロー使う ひたちなか市 衛藤美波
最近ではプラスチックの害が盛んに言われるようになった。ストローもペットボトルもやがては使われなくなるかもしれニア。
あめんぼのなづさふ跡の寂しさに冬の夕日はきらめき渡る 東京 長谷久枝
「なづさふ」の意味は「水にもまれている。水に浮かび漂っている」で万葉集でも使用されている。
伊藤一彦選
暖簾より洩るる匂ひに引きこまる湯気を差し出す屋台のおやぢ 香取市 嶋田武夫
選者評「暖かいおでんの恋しい季節。暖簾から洩れる湯気と匂いを「屋台のおやぢ」が差し出していると歌ったのが面白い。」特選。
一茶の句思ひ出だして独り言つぶやく吾にすずめが鳴けり 常総市 渡辺守
「雀の子そこのけそこのけお馬が通る」だろうか。一茶の頃にも今も雀はいつでもそこにいる。
電線にずらりと並ぶムクドリの数羽がときに席替えをする 掛川市 村松建彦
椋鳥が飛び立ってはまた列に分け入る様子。「席替え」が無類に面白い。
かなしみの青を消し去る夕焼けに頬やわらかき幼と歩く 富士宮市 永松郁子
「青」をかなしみとするのは作者の主観だがそう言い切る。「頬やわらかき」が素晴らしく良い。
ビル風の北風に変わる丸の内黒き背広の群れは臆せず 大牟田市 本田守親
ハードボイルを思わせるようなサラリーマンの厳しさ。
敗者にはバネの生まれてくると言ふ思ひ返せば幾度か撥ねし 秋田 三浦政博
読み進めると上句と下句には時間の隔たりがあることがわかる。静かに回顧される下句の気概がすばらしい。
小春日に双子生みたる牛を誉め新わらたっぷり敷いてやるなり 沼津市 岩城英雄
双子の牛の出産は、牧場主には喜びなのだろうが、それだけに母牛は大変なのだろう。「たっぷり」というのがいい。牛で名kう、こちらまでうれしくなるような歌だ。
米川千嘉子・選
スクランブル先頭を行く自撮り棒うしろの私も世界に散らばる 富士宮市 永松郁子
選者評は「スクランブル交差点で自撮りするのは外国人旅行者か。偶然後ろにいた作者も写って世界へ。結句が楽しい。」
めっきりと花の減りたる友の庭友の身体を診るごとく見る 東京 吉村享子
こういうこともあるのだなあと思う。花いっぱいにしていた人のにがさびしい庭になっていて、友の体を気遣う作者。
冬服の重さがずしり肩に乗るそれをお洒落と言つてた時代 明石市 小田和子
そういえば、昔の服は重かった。それが富んでいることでもあったのだろう。
大方は杉林なる山脈に落葉松(からまつ)一本金に光れり 鶴岡市 大沼葉子
結句が良い。良く見つけられた。
加藤治郎・選
やわらかい炎のひとにふれられてわたしはしずかにほどけはじめる 京都市 岡本沙織
愛の交歓を美しく歌う。
鳥が鳥を産むかなしさよ わたくしは人よりほかに産むものもなく 大和郡山市 大津瑞貴
不思議な感じのする歌だ。
雪ふれて甘さの増してゆくような干し柿 やっとあなたに会える 所沢市 神田望
これも恋愛の歌だったか。
どちらにも一人や二人ユニホーム違うのが居る草野球の試合 東京 南本禎亮
いろいろなチームに所属して間に合わせのユニフォームなのだろう。草野球らしい。
パソコンにバナナをのせてみたけれどこたつのみかんに勝てはしなくて 守口市 小杉なんぎん
何となく面白い歌。こたつのみかんは定番なのだ。それ以上のものは生まれまい。
鈴虫の音に囲まれてやや不幸寄りの半生打ち明けられる 大阪市 森下裕隆
若い人なのだろうか。「やや不幸」というのが微妙な感興を与えておもしろいところ。
まとめ
今週もすてきな歌でたくさんでした。晩秋を思わせる歌はそれほど見られませんが、個性あふれる作品が多くて見習いたいです。ではまた来週。
先週の毎日歌壇
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