詩歌

牛の俳句 角川俳句賞 鈴木牛後『牛の朱夏』

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こんにちは。まるです。
今朝の朝日新聞の天声人語に、鈴木牛後という名前の俳人の俳句が紹介されていました。ペンネームの通り、牛が題材となっている作品です。

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鈴木牛後 角川俳句賞を受賞

鈴木牛後氏は今年角川俳句賞を受賞されたそうですが、50句のうち、19句に「牛」が出てくる俳句です。

牛の尾を引き摺るやうに寒波来る
牛産むを待てば我が家やの冬灯
我が足を蹄(ひづめ)と思ふ草いきれ
角焼き了(お)へて冷えゆく牛と我
牛死せり片眼は蒲公英にふれて
農道をひたひた歩き春遠し

鈴木氏はどういう経歴の方かというと、30代の頃に札幌の会社勤めを辞めて、酪農を職業とされるようになったそうです。
俳句歴は10年だそうです。

古泉千樫の牛の歌

牛の短歌で思い出すものは、古泉千樫の歌です。

老いませる父に寄りそひあかねさす昼の厩(うまや)に牛を見て居り
乳牛の体のとがりのおのづからいつくしくしてあはれなりけり
さ庭べにつなげる牛の寝たる音おほどかにひびき昼ふけにけり
茱萸(ぐみ)の実の白くひかれる渚みち牛ひとついて海に向き立つ
夕なぎさ子牛に乳をのませ居る牛の額のかがやけるかも

千樫の場合は、大規模な酪農ではなくて、あるいは農家の多くは牛を飼っていたのかもしれません。

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古泉千樫の牛の歌 岡井隆の連作の解説

伊藤左千夫 牛飼いの歌

古泉千樫のは幼い時の実家の思い出ですが、伊藤左千夫は牛乳を搾って売る「牛乳搾乳業」を職業としていました。

牛がいつも身近にいたのですが、牛の歌が多いという印象は持たないです。
やはりそれで仕事をしていると、いつくしむ対象とはならず、それほど歌にも詠まれなかったのかもしれません。

牛飼いが歌読む時に世の中のあたらしき歌大いに起る
牛飼の歌人(うたびと)左千夫がおもなりをじやぼんに似ぬと誰か云ひたる
竪川(たてかは)に牛飼ふ家や楓(かへで)萌え木蓮咲き児牛遊べり 

伊藤左千夫短歌代表作30首 牛飼の歌 九十九里詠 ほろびの光

北海道の大地 時田則雄『北方論』

他に北海道の農業の歌で、真っ先に思い出されるのは、『北方論』の時田則雄です。

指をもて選(すぐ)りたる種子十万粒芽ばえれば声をあげて妻呼ぶ
二万株の南瓜に水をそそぐ妻麦藁帽を風にそよがせ
月光に濡れてとどろくコンバイン小麦十町歩穫り終はりたり
トレーラーに千個の南瓜と妻を積み霧に濡れつつ野をもどりきぬ
離農せしおまへの家をくべながら冬越す窓に花咲かせをり
今日の空眩しすぎるぞ俺のまま生きてゆくのだ骨となるまで

おそらく、酪農ではなくて、農業をされているのだと思いますが、一度触れれば、忘れらない歌です。

スケールの大きさに圧倒されますが、それは北海道の大地が詠まれているだけではない。
佐々木幸綱の影響を受けたとも言われており、「思想」は詠まれる事物にではなく、やはり詠む人にあるのだとも気付かされます。

酪農や農業は大変だろうなと思いながら、このような暮らしに対するあこがれも掻き立てられます。

鈴木牛後『牛の朱夏』掲載冊子





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