「八月の歌」短歌コンクール、朝日新聞社主催の平和への思いを詠んだ短歌の優秀賞10首と奨励賞45首が決まりました。
1981首の応募から選ばれた優秀賞10首をお知らせします。
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「八月の歌」短歌コンクール
応募は一般の部に443首、中学・高校の部に1538首の合わせて1981首。
選者は、フランスで平和活動に取り組む歌人、美帆シボさんです。
八月の歌優秀賞
入賞作品は、一般と中学、高校生の部に分かれており、それぞれの短歌は下の通りです。
【一般の部】
「オトウサンハ モウオウマニハナレマセンガ…」知覧(ちらん)の遺書のあとは読めない(岐阜市)榎並千鶴子
出典は万葉集という令和 あらためて読む防人(さきもり)の歌(埼玉県入間市)忍足良夫
紛争で敵国となりし者同士ジョークを交わす日本語教室(津市)柘植欽也
助けたい命のビザを二千通 千畝(ちうね)のペンは今も光りて(宮城県蔵王町)中松伴子
軍鳩(ぐんきゅう)の慰霊碑前で遊ぶ子ら鳩も戦(いくさ)に出た時代あり(千葉県柏市)福川敏機
1首目、戦場から家族に届いた手紙が、そのまま「遺書」となったものでしょう。子どもに語りかけたお手紙です。
2首目、令和になって、万葉集がブームになりましたが、一時的なものではなくて、これからもずっと読み継がれるきっかけになったと思います。
3首目、敵国とはいっても、かつての敵国。子供世代には、敵味方の区別はなくなりました。
4首目、千畝というのは、日本の外交官で会って杉原千畝氏のこと。ユダヤ人を日本経由で出国させることに尽力しました。この方の奥様はアララギの所属しており、その時のことも短歌に詠んでいます。
5首目、「軍馬」は良く聞きますが、「軍鳩」は伝書鳩として通信に使われたものでしょうか。
ずっと平和のシンボルとして、あってほしいものですね。
関連記事:
命のビザ杉原千畝の夫人杉原幸子の歌集『白夜』
八月の歌【中学・高校の部】
糸満の空を見上げる七千本 向日葵(ひまわり)静かに犠牲者偲(しの)ぶ(名古屋市・名古屋高2年)久保木慧
亡き友の衣類重ね着て耐え抜いた帰還兵の口数少なし(北海道江別市・立命館慶祥中1年)小松さくら
シリアから来た難民の青年は被爆ピアノで平和奏でる(名古屋市・金城学院高3年)中村桃子
原爆への思い語りて去る背中 昨年よりも小さくなりぬ(岐阜県・高山市立荘川中3年)水尻心
願おうよ怖い戦(いくさ)の命令も号令もない令和の世界(仙台市立吉成中2年)横溝惺哉
他に奨励賞が、45首あります。
目についたものをご紹介します。
八月の歌 奨励賞【一般の部】
あのビルは原爆ドームなどと言ふ名では無かつたあの朝までは(岐阜県高山市)広瀬亮子
説明に自殺魚雷と書かれたるパールハーバーの回天を見き(福岡県柳川市)穆谷祥子
空を飛ぶチェルノブイリの空を飛ぶ奇形の燕も飛ばねばならぬ(岐阜県高山市)和田操
八月の歌 奨励賞【中学・高校の部】
核を持ち得られる均衡(バランス)なんかより核無き平和を祈る折鶴(長崎県立長崎西高3年)石森聡子
黒こげたセーラー服の持ち主は私と同じ15歳の君(きみ)(岐阜県・美濃加茂市立東中3年)近藤ゆうみ
――それぞれ、戦争を知らない世代が、自分のことにひきつけて詠うという意味を考えさせられます。
「生きたい」と祈りを込めて鶴を折る禎子の想い世界に届け(岐阜県・高山市立清見中3年)坂上妃生
石段の跡みつめれば人の影 動き出しそうなヒロシマのあの日(岐阜県立吉城高1年)田口柚太
その影は主の姿を待ち続け今なおひとり暗く焼き付く(静岡県立藤枝東高2年)望月悠凪
三輪車またあそぶ日をまちうける戦争のないあの日常を(岐阜県立吉城高1年)坂上爽太
――原爆資料館他の見学の歌が、このように詠まれているということです。
後世に伝えることの大切さを思わされます。
中でも、一つ選べと言われたら、この歌を。
地球儀を小さな指で滑らせる子の知らぬ戦争語る祖母(岐阜県立飛驒神岡高3年)古田雅人
「八月の歌」、表彰式は8月11日に岐阜県高山市で開かれます。
年々薄くなる戦争の記憶、戦争を知らない世代の私たちも、見聞きしたことを元に、八月には平和の歌を読んでみませんか。