秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる
古今和歌集に収録されている、藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん)の和歌の現代語訳、品詞分解と修辞法の解説、鑑賞を記します。
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秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる
読み: あききぬと めに
作者と出典
藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん)
古今和歌集 169
現代語訳と意味
秋が来たというのは目でははっきりとわからぬが、風の音にふと秋だなと感じされられることだ
語句と文法
秋来ぬ | 「ぬ」過去の完了の助動詞 秋が来た |
さやかに | はっきりとの意味の副詞 |
見えねども | 「ね」は打消しの助動詞「ず」の已然形 「ども」は逆説確定条件の接続助詞「・・・けれども」の意味 |
音にぞ | 「ぞ」は強意の助詞 |
おどろかれぬる | 「おどろく」は動詞 「れ」は自発の助動詞「る」の連用形 「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形 |
句切れ
句切れなし
係り結び 修辞法
「風の音にぞおどろかれぬる」 の 「ぞ・・・ぬる」は係り結びが用いられています。
係り結びの法則
係り結びは、「ぞ・なむ・や・か」の係助詞は、そのあとの動詞の連体形と結びつき、「こそ」は已然形と結びつく決まりです
係り結びの解説
係り結びとは 短歌・古典和歌の修辞・表現技法解説
解説
「秋立つ日よめる」との詞書きがある藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん)の歌。
「秋立つ日」は立秋のことで、その日に秋めいた風が吹いたということで、季節の変化を感覚的にとらえる場面を詠んでいます。
「おどろかれぬる」の「おどろく」は、漢詩に多い表現で、「はっとしてそう気づいた」という意味です。
「目には見えねども」の部分が、風の触感のようなものを想像させます。
繊細な感覚でとらえた「秋」は秋の入り、秋分の日にこそふさわしいでしょう。
藤原敏行朝臣について
藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん)
生年不詳~207年 三十六歌仙の一人。
若くして書家としても知られた。
「住の江の岸による波よるさへや夢のかよひ路」の歌が、『古今集』恋・559と百人一首18番にも選ばれている。