ほととぎす鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな
古今和歌集に収録されているよみ人知らずの和歌の現代語訳、序詞と掛詞、句切れを含む修辞法の解説と鑑賞を記します。
スポンサーリンク
ほととぎす鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな
読み:ほととぎす なくやさつきの あやめぐさ あやめもしらぬ こいもするかな
作者と出典
古今和歌集 469 読み人知らず
現代語訳と意味
ほととぎすが鳴いている。その五月に咲く菖蒲草ではないが、あやめという名のように、筋目もわからない恋をするものだなあ
語句と文法
ほととぎす | ほととぎすは5月を指す(下部参照) |
あやめぐさ | 今の菖蒲 |
鳴くや | 「や」は間投助詞 |
かな | 詠嘆の助詞「だなあ」の意味 |
句切れ
3句切れ
掛詞
「あやめ」 菖蒲と綾目
序詞
「ほととぎす鳴くやさつきのあやめ草」の3句は序詞
解説
読み人しらずで作者がわからないながら、おもしろい歌です。
「ほととぎす鳴くや」の意味
ほととぎすは、5月に鳴く鳥とされ、万葉集以来、恋い慕うものを暗示します。
「鳴くや」の「や」で歌の調子を整えながら、「ほととぎす鳴くや」でその後の5月に結び付けています。
「ほととぎす鳴くや=5月」といった方がわかりやすいかもしれません。この部分が序詞です。
なお、陰暦の五月は、今の6月下旬ということで、実際はやや憂鬱な季節であるので、上のような述懐になったようです。
「あやめ」の掛詞
「あやめ」というのは、菖蒲などの、5月に咲く花のことですが、同時に「綾目」の事でもあります。
すなわち、筋目、筋道と同じで、恋の情熱に盲目的になってしまった、ということを指しているのです。
うれしい歌ではなくて、小さな嘆きを含む歌です。