栗木京子短歌代表作品 第一歌集『水惑星』他  

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栗木京子短歌代表作品 第一歌集『水惑星』他

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栗木京子さんの短歌は、「観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日我には一生」が教材にも取り上げられて一番の代表作と言われています。

栗木京子の他の短歌作品にはどのようなものがあるのでしょうか。

第一歌集の『水惑星』他『夏のうしろ』よりご紹介します。

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栗木京子の短歌作品

栗木京子さんの「観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日我には一生」は、作者の第一歌集にある作品で、とてもよく知られています。

作風は、”知的で叙情的”であるというところが特徴と言われています。

現代短歌の第一線で活躍中の栗木京子さんの他の作品を、第一歌集の『水惑星』他よりご紹介します。

 

観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日我には一生

読み:かんらんしゃ まわれよまわれ おもいでは きみにはひとひ われにはひとよ

作者と出典

栗木京子『水惑星』

現代語訳と意味

観覧車よ、どうぞとまることなく回り続けてほしい。あなたにはたった一日の思い出でしょうが、私には一生の思い出となるこのひと時を
 

解説と鑑賞

教科書にも掲載されている栗木京子さんの有名な代表作短歌。

観覧車はいかにも恋人たちの乗り物。その観覧車を背景に、若い作者の切ないまでの恋愛模様が描かれた作品として愛好されています。

しかし、単なる恋愛の心境というよりも、相手と居ながらも、相手の心境とは必ずしも一致しない一種の孤絶した作者の心情は、作者の他の作品にも見られるものです。

この歌の句切れや体言止めなどの詳しい解説は下の記事に。

 

いのちよりいのち産み継ぎ海原に水惑星(みづわくせい)の搏動を聴く

読み:いのちより いのちうみつぎ うなばらに みずわくせいの はくどうをきく

作者と出典

栗木京子『水惑星』

説と鑑賞

繰り返す波の音を、惑星の拍動ととらえ、地球という惑星を一つの命ととらえた壮大なスケールの作品です。

出産との関連をイメージされる方もいるようです。だとすれば、この情景は一つの大きな比喩かもしれません。

この作品は、歌集『水惑星』のタイトルとなった作品です。

以下、『水惑星』から。

 

栗木京子『水惑星』より短歌作品

かがみ込み数式を解く君が背の縫ひ目のほつれ見てをり我は

栗木さんはいわゆる「リケジョ」の方。相手の方もそうなのでしょう。

勉強熱心で数式を説くことに熱中している君、作者は、その背中に小さなほころびを見つけるのですが、その見たものの中にどこか寂しい気持ちが隠れていそうです。

 雑踏にて他人(ひと)と歩みの揃ふとき胸痛きまで我が孤独なる

人と並んで歩く時、ばらばらである歩幅と歩みのリズムが、ふと合う時があります。

そのぴったりに気が付く時、作者はむしろ、自分の孤独に気が付くというのです。

 

踏みしめて遥かに君の飛び立ちし滑走路暗く我が裡にあり

想像するに、疎遠を望まない「君」が旅立つのを見送る作者。

長く暗い滑走路は、作者の納得に至る道でもあるのかもしれません。

 

待つことを我は選びぬ夜の街に風と風との出会う音する

相手と離れても待つと決めた作者の耳に響くのは、風と風の逢いの音。

その音の中にあって、改めて自分の立ち位置を確認するかのようです。

 

作品には、争いや口論の場面を思わせる歌もあります。

人を責め火照(ほて)りしからだ夜の風に晒せばあはれ甘く匂へり

投げやりに論理いくつか跨ぎ越し物言へば愛の言葉となるも

ひたぶるに鋭き反問かもしれず言葉そのまま返る山彦

表現が難しい場面を繊細な感性でとらえられ、それぞれの出来事が作品として表現されています。

 

人にまぎれ回転扉押すやうに幸せにふと入りゆけぬか

観覧車の歌に似たモチーフ「回転扉」がイメージを醸し出しています。

回転扉は普通のドアとは違って、出てきた時は、違った空間にいるような錯覚を起こさせます。

その扉をくぐるように、状況がたやすく変わらないだろうかとイメージする作者、その孤独な心境と同時に転換への希望も推しはかられます。




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