かくれんぼの鬼とかれざるまま老いて誰をさがしにくる村祭
寺山修司の短歌でも、不思議な寓意に満ちた作品です。
きょうの日めくり短歌は、寺山修司の故郷青森に根差すだろう後年の歌からご紹介します。
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かくれんぼの鬼とかれざるまま老いて誰をさがしにくる村祭
出典:歌集「田園に死す」の「子守歌―捨子海峡」の章より
作者:寺山修司
青森への土着精神を表す短歌
寺山修司の後年の短歌には、それまでの青春が主題の短歌とは一転、故郷青森への土着精神を思わせる暗い一連の作品があります。
タイトルだけを見ても「捨子海峡」「恐山」「犬神」「山姥」など、それまでの作品とは趣の違ったものです。
売りにゆく柱時計がふいに鳴る横抱きにして枯野ゆくとき
売られたる夜の冬田へ一人来て埋めゆく母の真赤な櫛を
わが切りし二十の爪がしんしんとピースの罐に冷えてゆくらし
とんびの子なけよ下北かねたたき姥捨て以前の母眠らしむ
一首の意味
一首の意味は、「かくれんぼの鬼となった少年は、そのまま老人になり、故郷の村祭りに戻ってくるものの、誰を探しにくるのか」というような内容で、不思議な寓意に満ちています。
いわゆるそれまでの短歌、初期のアララギ的な歌を離れたポップなものとなっており、これも寺山の好まれる側面だろうと思います。
今日の日めくり短歌は、寺山修司の短歌を紹介しました。
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寺山修司プロフィール
寺山 修司(てらやま しゅうじ)1935年生
青森県弘前市生れ。 県立青森高校在学中より俳句、詩に早熟の才能を発揮。 早大教育学部に入学(後に中退)した1954(昭和29)年、「チエホフ祭」50首で短歌研究新人賞を受賞。 以後、放送劇、映画作品、さらには評論、写真などマルチに活動。膨大な量の文芸作品を発表した。