言の葉の上を這ひずり回るとも一語さへ蝶に化けぬ今宵は
10日に訃報が伝えられた歌人の岡井隆さん、前衛短歌運動など、戦後の短歌会をけん引されました。
これまでのたくさんの印象深い作品が思い起こされます。
きょうの日めくり短歌は、岡井隆さんの短歌作品をご紹介します。
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言の葉の上を這ひずり回るとも一語さへ蝶に化けぬ今宵は
読み:ことのはの うえをはいずりまわるとも いちごさえちょうに ばけぬこよいは
作者、岡井隆。歌集『暮れてゆくバッハ』より
「歌詠みが歌を詠む」歌に関しては、概してつまらなくなりがちで、詠み手にとっては難しいと言われています。
この歌は苦心して「蝶」を編み出そうとする作歌の現場の様子がうかがえて、微笑ましい感じもする歌です。
岡井隆さんの手で、たくさんの蝶になった言葉たちは、これからも人々に愛唱され続けることでしょう。
歌集『暮れてゆくバッハ』重版へ
10日に訃報の伝えられた岡井隆さん、歌集を求めたくても、品切れが続出するということになってしまいました。
早くも『暮れてゆくバッハ』の重版が決まったとのことです。
歌集のタイトルは下の歌から
ヨハン・セバスチャン・バッハの小川暮れゆきて水の響きの高まるころだ
バッハは言うまでもなく、クラシックのバロックの音楽家ですが、Bach(バッハ)は、ドイツ語で「小川」を指すとのこと。
「水の響き」とは音の響きでもあるのでしょう。
今日の日めくり短歌は、訃報が伝えられた岡井隆さんの短歌を紹介しました。
岡井隆プロフィール
岡井 隆(おかい たかし)1928年生
日本の歌人・詩人・文芸評論家。未来短歌会発行人。日本藝術院会員。塚本邦雄、寺山修司とともに前衛短歌の三雄の一人。
1993年から歌会始選者となり宮廷歌人となったが、そのことに対して歌壇では批判と論争が巻き起こった。
2007年から宮内庁御用掛。2016年、文化功労者選出。(ウィキペディアより)
他の岡井隆さんの短歌代表作品については、この後の別記事で紹介しています。
約しある二人の刻を予ねて知りて天の粉雪降らしむるかな 岡井隆【日めくり短歌】
肺尖にひとつ昼顔の花燃ゆと告げんとしつつたわむ言葉は 岡井隆【日めくり短歌】
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