在原業平の「かきつばた」の文字を詠み込んだ和歌が、朝のニュース番組で紹介されました。
伊勢物語と古今集の、「から衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬるたびをしぞ思ふ」の歌。
きょうの日めくり短歌は、在原業平の和歌をご紹介します。
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から衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬるたびをしぞ思ふ
作者は在原業平。出典は「古今和歌集」と「伊勢物語」
在原業平は、歌も上手な人ながら、“希代のプレイボーイ”として伝説的な人物ですね。
「伊勢物語」の主人公は在原業平がモデルと言われています。
この歌の詳しい解説は
から衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬるたびをしぞ思ふ 在原業平
在原業平については
在原業平の代表作和歌5首 作風と特徴
一首の意味
から衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬるたびをしぞ思ふ
この一首の意味は
唐衣を着なれるように、なれ親しんだ妻が都にいるので、はるかここまでやって来た旅のつらさを身にしみて感じることだ
というもの。
でも、この歌は植物を詠んだ歌ではありませんよね。
これがどうして「かきつばた」の歌といわれるのでしょうか。
その秘密は、各句の頭の文字にあります。
「かきつばた」の和歌
朝のニュース番組のクイズには「かきつばた」の名前の由来は?という問題が出されました。
それにちなむ在原業平の和歌が紹介されたわけですが、一体どこが「かきつばた」なのかというと、歌をしたのように書いてみるとわかります。
から衣
きつつなれにし
つましあれば
はるばる来ぬる
たびをしぞ思ふ
のそれぞれの句の頭文字を取ると「かきつばた」になるというものです。
そのままだと「かきつはた」ですが、「ば」の濁音は補って読みます。
この時代では「折句」と言われる方法で、今の言い方では「縦読み」といわれるものですね。
もう一つ紀貫之の折句をご紹介します。
小倉山峰立ちならし鳴く鹿の経にけむ秋を知る人ぞなし
こちらは紀貫之 古今和歌集の439の歌。
意味は
小倉山の峰に鳴く鹿は、幾年の秋を経ただろうか。それを知る人は誰もいない
というものです。
しかし、これも折句の歌ですので、意味よりも頭文字を見てみましょう
紀貫之の「をみなへし」の折句
をぐらやま
みねたちならし
なくしかの
へにけむあきを
しるひとぞなき
この歌には植物の「をみなえし」の植物の名前が詠み込まれているという趣向です。
一首の言葉遊びなのですが、暗号のようなちょっとどきどきする遊びですよね。
関連記事:
小倉山峰立ちならし鳴く鹿の経にけむ秋を知る人ぞなし 紀貫之の折句解説
かきつばたが愛知県の県花に
なぜ「かきつばた」が詠み込まれているのかというと、作者が旅の途中、三河の八橋という所で、八橋を流れる沢のほとりにかきつばたが美しく咲いていたのを見て、かきつばたという5文字を詠み込んで作ったというものです。
かきつばたは愛知県の県花なのですが、上の三河国八橋というのが、現在の知立市八橋であって、在原業平の歌に由来して制定されたそうですよ。
それではまた明日!
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