現代短歌

ほととぎす啼け私は詩歌てふ死に至らざる病を生きむ 塚本邦雄【日めくり短歌】

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今日8月7日は、歌人、塚本邦雄の誕生日です。

先日訃報が伝えられた岡井隆と共に、前衛短歌において活躍しました。

きょうの日めくり短歌は、塚本邦雄の短歌代表作5首をご紹介します。

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ほととぎす啼け私は詩歌てふ死に至らざる病を生きむ

読み:ほととぎすなけ わたくしは しいかとう しにいたらざる やまいをいきん

作者 塚本邦雄

塚本邦雄の誕生日 8月7日

歌人の塚本邦雄は、20世紀後半を代表する歌人。

先日訃報が伝えられた岡井隆、寺山修司と前衛短歌運動を展開しました。

歌といふ傘をかかげてはなやかに今わたりゆく橋のかずかず 岡井隆【日めくり短歌】

 

作品を見ると確かに、前衛と言われる新しい短歌であることは一目瞭然ですが、塚本の古典の短歌への知識の深さには定評があります。

特に、私の場合は、斎藤茂吉の短歌の解説「茂吉秀歌」において、大変な恩恵を受けました。

この方の解説はとにかく、面白い。

いわゆる「塚本節」と言われる独特の饒舌さで論を展開、しかもそれが豊かな短歌の知識に裏打ちされているものとなっています。

解説書としてためになるのは言うまでもないのですが、読んでいてとにかく面白いわけです。

短歌の研究というのではなく、一首の短歌にこれだけ想念をつむげるものか、こういう人こそが”詩人”というべきだと思った覚えがあります。

掲出歌は、古典の短歌に登場する「ほととぎす」を初句に置き、その後は、短歌を「死に至らざる病」とよぶところが、塚本らしいところです。

どきっとするような棘のある言葉が見られるのが特徴の一つです。

代表作の一つ、

突風に生卵割れ、かつてかく撃ちぬかれたる兵士の眼(まなこ)

グロテスクなまでの比喩に始まりますが、塚本邦雄は戦争も経験した世代で、やはり反戦が主題と言われています。

しかし、個人的には、塚本邦雄の短歌はそのような思想を持ち込まずとも、そのまま楽しむ方がおすすめです。

他に有名なのは

革命歌作詞家に凭りかかられてすこしづつ液化してゆくピアノ

これは、「革命歌」の作者に対する風刺があるわけですが、「液化していくピアノ」は真実の革命の不在を暗示するとのこと。

この「革命」は、政治的な意味合いはないところに作者のアイロニーがあると磯田光一の解説があります。

もう一つ、代表作として有名なのが

日本脱出したし皇帝ペンギンも皇帝ペンギン飼育係りも

歌集「日本人霊歌」の巻頭に置かれた歌。

句またがりが三か所もある大胆な手法の作品ですが、この「皇帝ペンギン」とは何かというと、「天皇の喩」(黒木美千代)という指摘があります。

ならば、その「皇帝ペンギン飼育係」というのは何かというと、それが戦後に主権者となった国民のことだそう。

「当時の日本社会の貧しさを戯画化」(同)したという解釈ですが、飼う者、飼われる者というシチュエーションの閉塞感は、現代においても「脱出」に十分通じる内容です。

 

馬を洗はば馬のたましひ冱ゆるまで人戀はば人あやむるこころ

この歌については、下の記事に解説を記してあります。

馬を洗はば馬のたましひ冱ゆるまで人戀はば人あやむるこころ 塚本邦雄

 

「詩歌てふ死に至らざる病を生きむ」―生きている間は、短歌と言葉と共にあり続けた塚本邦雄、その美学的な世界は、誕生とともに始まり、死後となっても滅びることはないのです。

塚本邦雄プロフィール

塚本邦雄 (1922~2005) 歌人。滋賀県生まれ。

第一歌集「水葬物語」の反写実、象徴主義的な歌風で前衛短歌の旗手となる。硬質で知的な抒情性は、従来の短歌を革新した。

喩(ゆ)とイメージを武器として危機時代の人間の魂を呼び覚ます高度に美学的な手法を完成。「現代の定家」を自負する作者の鬼才は、小説、評論、映画、シャンソンの領域にも及び、絢爛(けんらん)たる文体とともに、余人の追随を許さぬ独自の美学的世界を確立した。1990年(平成2)紫綬褒章(しじゅほうしょう)受章。

歌集「日本人霊歌」「詩歌変」、評論「定家百首」など。 https://kotobank.jp/word/%E5%A1%9A%E6%9C%AC%E9%82%A6%E9%9B%84-570889

 

きょうの日めくり短歌は、塚本邦雄の短歌をご紹介しました。

それではまた明日!

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