万葉集

あしひきの山のしづくに妹待つと我立ち濡れぬ山のしづくに 大津皇子

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あしひきの山のしづくに妹待つと我立ち濡れぬ山のしづくに

大津皇子が石川郎女に贈った相聞の和歌、万葉集の代表的な短歌作品の現代語訳、句切れや語句、品詞分解を解説します。

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あしひきの山のしづくに妹待つと我立ち濡れぬ山のしづくに

読み:あしひきの やまのしずくに いもまつと あれたちぬれぬ やまのしずくに

作者と出典

大津皇子 (2-107)

現代語訳

山の雫にあなたが来るのを待っていて私は濡れてしまった その山のしずくに

語句と文法の解説

・あしひきの…「山」にかかる枕詞

・山のしずく…山の梢などから落ちるしずくのこと。第四句にかかる

・妹待つと…「妹を待つとて」の意味に同じ 「妹を待とうとして・妹を待つために」の意味。

立ち濡る(たちぬる)が基本形。「立ったまま雨などに濡れる」の意味

参考:
わが背子を大和へ遣るとさ夜更けて暁露に我が立ち濡れし 大伯皇女

※枕詞については
枕詞とは その意味と主要20の和歌の用例

句切れと修辞について

  • 4句切れ
  • 倒置
  • 反復




 

解説と鑑賞

一首の解説と鑑賞を記します。

大津皇子の相聞の歌

一首は大津皇子が、石川郎女(いしかわのいらつめ)に贈った相聞の歌で、しっとりとした情感を持っています。

妹(いも)は、親しい女性の相手に呼びかける言葉。

その女性、石川の郎女を木下に待っていて雫に濡れたという意味の歌で、「あなたを待っていて」そのような長い時間に、というのが、相手の女性に伝えたいことです。

そうして、自分の思いが強いことを伝えるわけですが、声高に訴えるのでは無くて、歌の内容からもじっと待っている作者の様子とその心情を訴えるというものです。

「山のしずくに」の結句は、繰り返しのために、内容がその分薄いようですが、歌の調子が整っており、親しみも込められています。

石川郎女の返歌

石川郎女はこれに、

我を待つと君が濡れけむあしひきの山のしづくにならましものを

という返歌を送っています。

意味は、「私を待ってあなたがぬれたという、山のしずくになれたらよいのに」という意味です。

こちらも優れた歌とされ、一対の相聞の和歌として万葉集に収録されているものです。

大津皇子の辞世の句

他に、大津皇子には、辞世の句とされている

ももづたふ磐余の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ

がありますが、これは、大津皇子の作とした伝承歌であるとされています。

理由は「雲隠り」が、第三者が使う表現、現代語なら「お隠れになった」というような意味で、本人が自身に使う言葉ではないためです。

そのため、

「大津皇子の非業の死を悼んで詠んだ後人の仮託ではないかと思われる」(『万葉集』小学館)

となっています。

他にも

大津皇子はその多才、奔放な性格をこころよく思わない持統天皇の謀略に陥って処刑された

と解説にあり、大津皇子の事件は、万葉集の時代の一つの日劇として広く伝わっています。

 

万葉集解説のベストセラー

万葉集解説の本で、一番売れているのが、斎藤茂吉の「万葉秀歌」です。有名な歌、すぐれた歌の解説がコンパクトに記されています。







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