万葉集

言霊信仰と万葉集の言霊の和歌・言霊が宿るの意味

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言霊、ことだまとは「声に出して言う事によってそれが実現する」という意味の不思議な言葉です。

万葉集にはこの「言霊」を使った歌が、3首あります。

言霊の意味と、言霊につながる「祝」や「寿」の言葉の由来、万葉集での言霊の使われ方をあげて、言霊信仰を解説します。

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言霊「ことだま」とは

日本最古の歌集である、万葉集の中に、『言霊』ということばがみられます。

読みは「ことだま」。字の通りに、「言―ことば」とその「霊―たましい」とを並列したことばです。

言霊の意味

言霊の意味は

声に出して言う事によってそれが実現する

という意味。

この考え方を言霊思想、または、言霊信仰 といいます。

言霊信仰と言霊思想

言霊思想とは「言葉に宿ると信じられた霊的な力」のこと。

広い意味では、

声に出した言葉が、現実の事象に対して何らかの影響を与えると信じられ、良い言葉を発すると良いことが起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こる―wikipedia

言霊信仰は、それを信じるという考え方のことを指します。

万葉集の時代には、「未来の祝福を祈るとそれが現実になる」という信仰があったのです。

 

「祝う」と「寿(ことほき)」の例

言霊思想に関わる言葉として、古くからある「祝う」と「寿」について見てみましょう

「祝う」は「忌+わう」

「祝う」ということばは、「忌(い)」を「わう」、「忌+わう」というのが元々の由来です。

「忌」の意味は穢れや不潔を避け清らかさを保つこと

「わう」の意味は、その状態を進展させることを表します。

「祝う」はそこから、「清らかで神聖なことを進展させる」という意味で、声を上げて祈ることが元々の意味です。

万葉集の時代には、「未来の祝福を祈るとそれが現実になる」と思われていたのです。

「寿」は「言(こと)+祝(ほ)く」

もう一つ「寿」の方は、語源は「ことほき」。

ことほきの「こと」は「言」、ほくは「祝く」と書いて「ほく」と読み、「言(こと)+祝(ほ)く」

こちらも「祈って幸福を招きいれる」という意味になります。

言霊が宿るの意味

この場合の「祈り」とは、心に思うことではなくて、言葉を声に出しながら祈るこ、すなわち、「祝詞(のりと)」をあげて祈ることが前提となっているのが特徴です。

言霊が宿るというのは、そうして祈った言葉に対して初めて、言霊が機能するということです。

つぶやきのような、祈りの心を持たない言葉にまで、”言霊が宿る”ということではありません。

国文学者の折口信夫は、言霊について

「言語精霊が能動的に霊力を発揮することを言う」

と説明しました。

そして、さらに、

伝来正しき『神言』の威力と、その詞句の精霊の活動とに信頼すると言ふ二様の考えが重なつてきているようである。

と解説します。

言霊というのは、要は『神言』レベルでのこと、そして下の万葉集の歌を見るとわかるように、「大和の国」の”国家レベル”の事とともいえます。

勿論、結婚式などでの儀式のような、神様につながりのあるような場所における言い間違いは避けるべきでしょうが、あらゆる言葉が「神言」になるとは思えません。

祈りの心構えがあってはじめて、言葉に心がこもり、言霊が宿るのだと思います。

 

万葉集の言霊の和歌

万葉集の言霊の和歌は 3首あります。

しきしまの 大和の国は 言霊の さきはふ国ぞ まさきくありこそ
柿本人麻呂 
(13-3254)

神代より 言ひ伝て来らく そらみつ 大和の国は 皇神の 厳しき国 言霊の 幸はふ国と 語り継ぎ 言ひ継がひけり
山上憶良の長歌より部分 (5-894)

言霊の八十(やそ)のちまたに 夕占(ゆうけ)問ひ 占(うら)正に告(の)る 妹はあひ寄らむ
作者未詳 柿本人麻呂歌集 (11-2506)

 

柿本人麿の歌の意味

しきしまの 大和の国は 言霊の さきはふ国ぞ まさきくありこそ(13-3254)

の歌の意味は

やまとの国は言葉の霊力が物事をよい方向へ動かしてくれる国です、どうか私が言葉で申し上げることによって、どうぞその通り、無事でいて下さい。

というもの。

遣唐使を送り出すときの歌で、相手の無事を詠むために詠まれました。

当時の短歌というのは、文字に書くものではなくて、朗唱されるものでした。宴会の席であれば、舞がつくこともありました。

おそらくこの歌も、そのような席で詠まれたものであったと思われます。

山上憶良の歌の意味

これは、山上憶良の長歌の最も冒頭の部分です。

神代より 言ひ伝て来らく そらみつ 大和の国は 皇神の 厳しき国 言霊の 幸はふ国と 語り継ぎ 言ひ継がひけり

その部分の意味は

神代の昔から言い伝えられてきたとおり、わが大和の国は、スメ神が威厳をもって守る国であり、言霊が幸いをもたらす国であると、語り継ぎ、言い継がれてきた国だ

というもの。

皇神(すめかみ)は「皇室の祖先である神。皇祖の神」のことで、神を敬っていう言葉です。

作者未詳の歌の意味

作者未詳の歌は、恋愛に関する歌で、占いの結果を述べる歌です

言霊の八十(やそ)のちまたに 夕占(ゆうけ)問ひ 占正(うらまさ)に告(の)る 妹はあひ寄らむ 11-2506

意味は

言霊の行きかう辻道で 夕占(ゆうけ)の神に尋ねたら 神ははっきりこう言った 恋は成就するだろう

八十(やそ)のちまたというのは、当時行われてた辻占いのための場所。

そこで聞いた占いが、良い結果であったので、その喜びを歌に詠んだのでしょう。

言霊思想は、この時代に特徴的でもあり、単に一つの言葉の意味だけではなく、古代の人たちの心や風習、「大和」である国も含めた広い意味でのあり方に通じる観念です。

特に古い時代の和歌を詠むときには、言葉の背景にそのような古代の人の考え方があるということを念頭に置いて鑑賞してみてください。







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