偶然短歌 隣り合わせの言葉が作る57577の妙  

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偶然短歌 隣り合わせの言葉が作る57577の妙

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偶然短歌という不思議な短歌がSNSで注目を集めています。

偶然短歌とは何か、偶然短歌の中でも短歌らしい短歌とその特徴とをあげます。

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偶然短歌とは

短歌には、言葉と言葉の出会い、セレンディピティというべき、”偶然短歌”というものがあります。

偶然短歌とは

 膨大にあるWikipediaの中から、「五・七・五・七・七」、短歌のリズムになったフレーズを抜き出してツイートするTwitterBOT

のこと。

隣り合った言葉が、57577の字数であること、そして、それがそれなりの意味を持っていることで成り立つ短歌形式の文章のことですね。

インターネットSNS、そしてAIが日常となった世界に生れる、いわば新しい言葉遊びが、”偶然短歌”です。

偶然短歌の実際

SNSで発信されている偶然短歌とは次のようなものです。

  1. 泳げないロッテが川に飛び込んで泳げるようになるエピソード
  2. 傍心を中心として半径がその距離である円を傍接
  3. 出たところ、その柵を跳び越えて中にいた雌ヒョウに襲われ
  4. 人々に、どうして可見の魂の火を示したらよいかと思ひ
  5. コメントを発した際に横にいたなるみが「なんやそれ」と厳しい
  6. ユニークなイギリス製の製品で、おもちゃでもあり、パズルでもあり
  7. 「野球より大事なものは、世の中に山ほどある」と説教される

出典は、wikipedia日本語版の、それぞれ「わたしとわたし ふたりのロッテ」「三角形」「松島トモ子」「軽王子と衣通姫」「大木こだま・ひびき」「シンクレア ZX81」「オールド・ルーキー」。

「『偶然』は異常なまでにおもしろい! 言葉に神が宿っています」と絶賛される偶然短歌ですが、やはり、若干の出来不出来はあるような気もします。

偶然短歌の結句 連用止めと体言止め

泳げないロッテが川に飛び込んで泳げるようになるエピソード

出たところ、その柵を跳び越えて中にいた雌ヒョウに襲われ

短歌の最後の部分の7文字を結句といいますが、まずは、偶然短歌の結句に当たる、その部分を見てみましょう。

まず、最後が「襲われ」「思ひ」となるような、半端な終わり方、これは短歌では連用止めと言われますが、やはり未完成の感じを与えてしまいます。

上の例で「エピソード」「傍接」というのは、名詞であって、連用止めよりはずっと完成の印象が増します。

こちらは体言止めと言われる、短歌の修辞法の一つです。

「野球より大事なものは、世の中に山ほどある」と説教される

そして、一般的には、動詞の終止形、「説教される」の方が、体言止めよりは、一首の完成度は高いといわれます。

歌をざっと見て、目に入るのは、この結句でしたので、短歌の結句はやはり大切な部分であるのです。

偶然短歌の和語と漢語、旧仮名遣い

傍心を中心として半径がその距離である円を傍接

人々に、どうして可見の魂の火を示したらよいかと思ひ

2首目の「中心・半径・距離・傍接」、こういう二文字の漢字熟語は「漢語」と言われるもので、短歌ではあまり使われません。

たとえば、俳句では「残月(ざんげつ」というものが、短歌では「残る月」というように用いられる言葉の違いがあります。

禁止というわけではありませんが、歌に慣れた人から見ると、和語の多い方が短歌らしくはあります。

3首目の、「思ひ」の「ひ」は旧仮名遣いというものです。現代でも旧仮名遣いが良いとして、これしか使わない歌人や一般の読み手もいます。

好みではありますが、旧仮名遣いは、現代では短歌以外ではほぼ見られないので、その点からは短歌らしい印象は強まりますね。

短歌の句読点

ユニークなイギリス製の製品で、おもちゃでもあり、パズルでもあり

なお、偶然短歌では、出典がwikipediaなので、句読点は使われることは当然あり得ますが、それは普通の文章、散文だからですね。

元々の伝統的な和歌には句読点はありませんで、また字空けや行の分けなどもありません。

石川啄木の文体や、釈迢空の句読点の使用は、短歌では特殊なものとなります。

例:

砂山の砂に腹這ひ
初恋の
いたみを遠くおもひ出づる日

葛の花 踏みしだかれて 色あたらし。この山道を行きし人あり

ただし、現代の短歌では、句読点や、字空けはそれほど抵抗なく使用されます。

どちらも言葉のつながりが不明瞭になる場合に、多く使われているようです。

かぎ括弧と口語の取り入れ

コメントを発した際に横にいたなるみが「なんやそれ」と厳しい

ユニークなイギリス製の製品で、おもちゃでもあり、パズルでもあり

「野球より大事なものは、世の中に山ほどある」と説教される

5首目の口語の取入れは、現代の短歌では、普通に見られます。

「あり…あり」の反復の技法も、短歌にはよく見られる言葉の調子を作る修辞法ですが、ここを探し出した偶然短歌はすごいですね。

いちばん最後の文章は、これはもう、このまま「短歌」でもいいような感じもしてきてしまいます。

終りに

偶然短歌、おもしろかったですね。この調子だと毎回無限に歌ができてしまいます。

57577のリズムを持っているものは、どれでも「短歌」の感じはしてくるんですね。

しかし、偶然短歌はあくまでロボット、なんか物足りないなあと思ったら、ぜひ自分でも短歌を作ってみてくださいね。




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