夏の夜はまだ宵ながらあけぬるを雲のいづこに月やどるらむ
世の短さを詠った百人一首の清原深養父の和歌、現代語訳、修辞法の解説と鑑賞を記します。
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夏の夜はまだ宵ながらあけぬるを雲のいづこに月やどるらむ
作者:清原深養父(きよはら の ふかやぶ)
出典
古今集 百人一首36
現代語訳:
夏の夜はまだ宵の口だと思っているうちに、もう夜が明けてしまうくらい短い。
これではいったい雲のどの辺りに、月はとどまっていられるのだろうか。
・・
語と句切れ・修辞法の概要
・宵…夜に入って間もない頃
・ながら…接続助詞の逆接 意味は「…けれども。…のに。」
・あけぬるを…基本形「明く」 夜が明ける
・いづこ…場所についていう不定称の指示代名詞 「どこ」
・やどる…「宿る」 自動詞ラ行四段活用 意味は「とどまる」
・らむ…推量の助動詞 連体形
※ 「いづこ」に呼応して連体形のむすびとなる
「あけぬるを」の品詞分解
- 基本形「明く」+「ぬる(完了の助動詞 連体形)」
- 「を」…接続助詞
句切れと修辞
句切れなし
擬人法
解説
古今集には、「月のおもしろ刈りける夜 暁がたに詠める」との詞書がある。
夏の夜の短さから、素朴な思いつきを平易に表現している作品。
「宵」は暗くなって夜9時ぐらいまでを表す言葉だが、誇張があり、詞書の「暁がた」の「暁」は夜明けのことなので、夜の短さがなお一層強調されている。
「月が宿る」の表現
月には「隠れる」という動詞が用いられることが多いがここでは、人が「泊る、とどまる」の「意味の宿る」が使われており、月を人に見たてた擬人法が用いられている。
月を身近な存在とするところから、素朴な疑問につなげている。
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