み吉野は山も霞みて白雪のふりにし里に春はきにけり 藤原良経  

広告 新古今集

み吉野は山も霞みて白雪のふりにし里に春はきにけり 藤原良経

※当サイトは広告を含む場合があります

み吉野は山も霞みて白雪のふりにし里に春はきにけり

藤原良経の新古今和歌集の巻頭歌である有名な和歌、現代語訳と掛詞など修辞法の解説と鑑賞を記します。

スポンサーリンク




み吉野は山も霞みて白雪のふりにし里に春はきにけり

読み:みよしのは やまもかすみて しらゆきに ふりにしさとに はるはきにけり

作者と出典

作者:藤原良経 後京極摂政前太政大臣(ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん)(1169〜1206)

出典:新古今和歌集1 巻頭歌

現代語訳:

吉野は山も霞んで、少し前まで白雪の降っていた里に、春がやって来たのだなあ

・・

語と文法

・み吉野…地名

・山も霞みて…春霞。春になると靄がかかったように見えることで季節の到来を知る

「ふりにし」の品詞分解

・「ふりにし」…「ふり」は「降り」と「古り」の両方がある掛詞。「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形 「し」は過去の助動詞「き」の連用形

・里…人の住む麓の村里

来にけり」の品詞分解

基本形「来(く)」 「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形 「けり」は詠嘆の助動詞「…だなあ」と訳すことが多い

句切れと修辞法

  • 句切れなし
  • 掛詞




解説

藤原良経の新古今集の最初の歌、巻頭歌。「治承題百首」の一首。「立春」との言葉が添えてある。

壬生忠岑の「春たつといふばかりにやみ吉野の山もかすみてけさは見ゆらむ」を本歌取りした歌で、古今集の巻頭歌が、「年の内に春は来にけりひととせをこぞといはんことしとやいはん 在原元方」で、同じく春の到来を詠っている。

一首の情景

春の霞が吉野山にかかっているのを見て、春の到来を知るというのが一首の主題。

ポイントは、「白雪のふりにし里」の部分にある。

雪が降っていたというのは、回想の情景だが、白い雪に包まれる里の風景をほうふつとさせるが、この光景は冬の回想であるにもかかわらず、ほのぼのとしている。

「ふりにし」は「降る」の他、「古い」の意味での「古りにし」で、吉野の里の由緒あるたたずまいを表す掛詞となっている。

藤原良経の歌は、哀傷や無常、ある種の虚無感を詠ったものが多いが、この歌は、明るい春の到来を詠う。

塚本邦雄一首評

塚本邦雄は最も好きな歌人として、藤原良経をあげており、この歌については

新古今巻頭第一首として知られる名歌ではあるが、この頃の百首歌のただならぬ眺めの中におけばその静けさはむしろ装いであり、後年自讃歌とするほどの晴れを意識したものと思われる。-「新古今集新論―二十一世紀に生きる詩歌」より

と記している。

藤原義経の他の和歌

かへる雁いまはの心ありあけに月と花との名こそ惜しけれ(新古62)

きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む




-新古今集

error: Content is protected !!