係り結びの逆説について、解説をまとめておきます。
凡河内躬恒の「春の夜のやみはあやなし梅の花色こそ見えねかやはかくるる」が有名です。
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係り結びの逆説とは
係り結びの逆説とは、通常の係り結びとは違い、下のような特徴となります。
- 文中に用いられることがある
- 意味は「けれども」の逆説になる
※通常の係り結びについてはこちら
係り結びとは 短歌・古典和歌の修辞・表現技法解説
■和歌の修辞法一覧
枕詞とは 意味と主要20一覧と和歌の用例
掛詞とは 和歌の表現技法の見つけ方
係り結びとは 短歌・古典和歌の修辞・表現技法解説
反語を使った表現 古文・古典短歌の文法解説
折句とは 和歌の技法「かきつばた」「をみなえし」と沓冠の用例
係り結びと「逆説」との比較
通常の係り結び | 係り結びの逆説 |
文末に用いられる | 文中に用いられることがある |
意味は強調 | 意味は「けれども」の逆説になる |
通常の係り結びは、「だ」と言い切るのに対して、「何々だがそうではなくて、けれども」となるところに違いがあるのです。
係り結びの逆説を使った和歌の用例
実際の用例を和歌からあげます。
春の夜のやみはあやなし梅の花色こそ見えねかやはかくるる
凡河内躬恒(おおしこうちみつね)の歌。
「色こそ見えね」は、「色は見えないけれども」の意味です。
歌の意味
春の夜の闇はわけのわからないものだ。梅の花は、確かに姿は見えないけれど、その香りだけは隠れるものだろうか、隠れはしない
この歌の詳しい解説
春の夜のやみはあやなし梅の花色こそ見えねかやはかくるる 凡河内躬恒
八重むぐらしげれる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり
恵慶法師の百人一首の歌
「人こそ見えね」は、「人は訪れないけれども」の意味です。
歌の意味
つる草が生え茂る屋敷はとても寂しく、ここを訪ねて来る人は誰もいないのに、秋だけは来るのだなあ
この歌の詳しい解説
八重むぐら茂れるやどのさびしきに人こそ見えね秋は来にけり 百人一首47恵慶法師
吹く風の色こそ見えね高砂の尾の上の松に秋は来にけり
藤原秀能の新古今集の和歌。
「吹く風の色こそ見えね」は「風の色は見えないけれども」の意味です。
歌の意味
吹く風の色は見えないが 高砂の尾の上の松に秋が来たのだよ
他にも
かきくらしなほ古里の雪のうちに跡こそ見えね春は来にけり
-宮内卿 新古今春歌上
わが袖は潮干にみえぬ沖の石の人こそ知らね乾く間もなし
-小倉百人一首92 讃岐
以上、係り結びの逆説について解説しました。