古今集

風吹けば沖つ白浪たつた山夜半にや君がひとりこゆらむ 「古今集・大和物語」他

風吹けば沖つ白浪たつた山夜半にや君がひとりこゆらむ

古今和歌集の和歌、他に「大和物語」「伊勢物語」にも収録されている短歌の現代語訳と修辞法の解説、鑑賞を記します。

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風吹けば沖つ白浪たつた山夜半にや君がひとりこゆらむ

現代語での読み:かぜふけば おきつしらなみ たつたやま よわにやきみが ひとりこゆらん

作者と出典

読み人知らず

古今集18 994・「伊勢物語」第23段 「大和物語」

在原業平については
在原業平の代表作和歌5首 作風と特徴

現代語訳と意味

風が吹くと沖の白波が「立つ」と読み習わす立田山だが、それを夜中にあなたがただ一人越えているのであろうか(新たな妻のもとへと)

句切れと修辞法

  • 3句切れ
  • 「立田山」山の名前は「「(波が)の立つ」との掛詞
  • 「沖つ」はその下の「立つ」と音を揃える効果もある

掛詞とは 和歌の表現技法の見つけ方を具体的用例をあげて解説

語と文法の解説

・風吹けば…「已然形+ば」。「吹くと」と訳す。確定順接条件

・沖つ白波…「つ」は「の」の意の格助詞。意味は「沖の白波」

・立田山…奈良と大阪の境にある山。

・夜半…夜更け、夜中の意味

・にや…「に+や(疑問の係助詞)」

・越ゆらむ…「らむ」は現在推量音助動詞




解説

この歌には、古今集に、歌の後に「左上」として詞書がついている

あらすじを示す左上(詞書)

ある人、この歌は、昔、大和国なりける人の女(むすめ)に、ある人、住みわたりけり。この女、親もなくなりて、家も悪くなり行間(ゆくあいだ)に、この男、河内国に、人をあひり知りて通ひつつつ、離れやうにのみ成り行きけり。さりけれども、つらげる気色も見えで、河内へ行くごとに、男の心のごとくにしつつ、出しやりければ、怪しと思ひて、もしなき間に異(こと)心もやあると疑ひて、月の面白かりける夜、河内へ行く真似にて、前栽の中に隠れて見ければ、夜更くるまで、琴を掻き鳴らしつつうち嘆きて、この歌をよみて寝にければ、これを聞きて、それより、又他へもまからず成りにけりとなむ言ひ伝へたる 「古今集」より

上の「男の心のごとくにしつつ」は「男の希望に添うように」

「異(こと)心もやあると疑ひて」は、心変わりのことを言います

左上(詞書)の意味

上の詞書の大意は以下の通り

大和国に住んでいる女性の元に通っていた男が、河内国の知り合いの元に出かけていくようになった。

しかし、「つらげなる気色も見えで」つまり、女がちっともつらそうに見えないので、怪しいと思った男が、「もしなき間に異(こと)心もやあると疑ひて」、女の変心を疑い嫉妬に駆られて動静をうかがうと、女は琴を弾いて一人嘆きながら、この歌を詠んだ。

それを聞いた男は、以後、よそへは外出をしないようになった。

「大和物語」の記述

「大和物語」においては、立田山の方に住んでいたのは、男の「新しい妻」と記されています。

「伊勢物語」にもほぼ同じ話があります。

一首の背景と理解のポイント

男の「知り合い」となっていますが、要は河内国の別な女性のところに通っていたのでしょう。

それを「女」である妻がちっとも嫌なそぶりを見せないので、隠れて伺っていると、夫である男の帰りを待って一人でいる妻が上の歌を詠んだので、実は妻が悲しい気持ちを隠していることがわかって、男が行動を改めたというのです。

男に通じた歌なので、それだけに気持ちがこもっている上に優れた歌となっています。

この歌の本歌

この歌の本歌と思われる歌、または類似の歌には万葉集の「二人行けど行き過ぎ難き秋山をいかにか君がひとり越ゆらむ(大伯皇女)」があります。

この歌の解説:
二人行けど行き過ぎ難き秋山をいかにか君がひとり越ゆらむ 大伯皇女




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