天の海に雲の波立ち月の船星の林に漕ぎ隠る見ゆ 夜空を空想的に詠んだ万葉集の代表的な和歌を鑑賞、解説します。
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天の海に雲の波立ち月の船星の林に漕ぎ隠る見ゆ
読み:あめのみに くものなみたち つきのふね ほしのはやしに こぎかくるみゆ
作者
作者不詳 柿本人麻呂歌集 万葉集 7-1068
現代語訳
天空は海に雲が波立ち付きの船は星の林に漕ぎ隠れていく
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句切れと修辞
- 句切れなし
語と文法
天の海…天は空のことで、大空を海に見立てている
林…多くのものが群がる様子を表す。例:酒池肉林
月の船…想像上の船 三日月という説もある
見ゆ…「見える」の意味の言葉だが、詠嘆の助詞「も」のような使われ方をする。
解説と鑑賞
「天を詠む」と題され柿本人麻呂歌集にある歌。万葉集第七巻の巻頭歌。
一首の主題
空を海に、月をその海に浮かぶ船、星の群れを林にそれぞれ例えて、夜空の風景をファンタジックに表した歌
漢語そのものではないが「天海」「雲波」「月船」「星林」はいずれも漢語風の造語といわれ、まず歌の上で、これらの言葉の工夫がある。
月の船」には、形状から三日月説もあるが、天の広さ、雄大さ、欲しとの対比などから、満月も予想される。
結句の「見ゆ」
「漕ぎ隠る見ゆ」の「見ゆ」は他にも用例があり、通常は、「見える」の意味となるが、詠嘆の「も」と共通する使い方をされている。
この歌においては、「月の船」は実際にも空想の事物であり、「見える」とするよりも、「漕ぎ隠れていくよ」と言った方がよいだろう。
この場合の「みゆ」は、
終止形を受け、存在を視覚によって描写的に把握する-「万葉集」小学館
の解説がある。
他にも、万葉集で夜空を空想的に詠んだものは七夕歌がよく知られている
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