たんぽぽのぽぽと絮毛のたちにけり 作者加藤楸邨の教科書掲載の俳句の意味の解説、鑑賞を記します。
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たんぽぽのぽぽと絮毛のたちにけり
読み:たんぽぽの ぽぽとわたげの たちにけり
作者と出典:
加藤楸邨
現代語訳
たんぽぽの綿毛が「ぽぽ」というように立ったのだなあ
句切れと切れ字
句切れなし
切れ字「けり」
季語
季語は「たんぽぽ」 春の季語
形式
有季定型
解説
現代の俳人 加藤楸邨の教科書掲載の俳句。
この句の意味
句の意味は、難しいことはなく、主語は「たんぽぽの綿毛」述語は「立ちにけり」の「立つ」。
すなわち、「たんぽぽの綿毛が立った」というのが句の内容であり、意味である。
作者の感動の中心
作者の感動の中心は綿毛と、その擬態語となる「ぽぽ」にある。
たんぽぽの綿毛のふわふわした柔らかい様子、それが季節の到来とともに花開くように丸く形を成してくる。
その、たんぽぽの綿毛から受ける、感覚的な感動、春になってその姿を見られる喜び、季節の到来などが、作者の感動の中心となるだろう。
「ぽぽ」の擬態語と句の構成
「ぽぽ」は擬態語なので、意味は含まれないが、それゆえ「ぽぽ」の音から受ける感じが大切なものとなる。
また、一句は、「たんぽぽの綿毛がぽぽと」ではなく、「たんぽぽのぽぽと」と、あえて「ぽぽのぽぽと」と「ぽぽ」がすぐに後につながる語順となっている。
「ぽぽ」の音は575の一七文字の中に、4つも含まれることになるが、この効果は実際に声に出して読んで確かめられたい。
また、このような意味のない音を配置するということは、作者の春になって和らいだ季節の中で生まれる遊び心も十分うかがえるだろう。
私自身のこの俳句の感想
たんぽぽの「ぽぽ」を取り出して俳句に使ったところがとても興味深いです。他の草花だったら、この句はできませんね。可愛らしくて面白い俳句だと思いました。
加藤楸邨の他の俳句
枯れゆけばおのれ光りぬ枯木みな
天の川怒濤のごとし人の死へ
玉虫はおのが光の中に死にき
掌にありて遠くはるかに春の貝
加藤楸邨について
1905-1993 昭和-平成時代の俳人。
明治38年5月26日生まれ。水原秋桜子に師事。昭和15年「寒雷」を創刊,主宰。43年「まぼろしの鹿」で蛇笏(だこつ)賞。生活に密着した人間臭の濃い句風で知られ、人間探究派ともよばれた。内面的苦悩をよむ作風、から人間探究派とよばれた。著作に「芭蕉秀句」「ひぐらし硯」など。