ハロー夜。ハロー静かな霜柱。ハローカップヌードルの海老たち 穂村弘  

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ハロー夜。ハロー静かな霜柱。ハローカップヌードルの海老たち 穂村弘

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ハロー夜。ハロー静かな霜柱。ハローカップヌードルの海老たち 穂村弘さんの有名な短歌、この歌の意味、工夫や表現技法を解説します。

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ハロー夜。ハロー静かな霜柱。ハローカップヌードルの海老たち

作者と出典:

穂村弘 『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』

穂村弘の短歌代表作と作品の特徴 ニューウェーブ短歌の旗手

この短歌の訳

現代語の口語の短歌なので訳は必要ありません。

表現技法と句切れ

・句点の使用

・初句切れ 3句切れ

・体言止め

解説と鑑賞

穂村弘の第2歌集『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』より。よく知られた有名な歌。

今でこそ、このような歌は珍しくなくなったが、口語短歌それ自体が新しいとされたニューウエーブ短歌の頃には、実験的なまでに斬新な印象を与える歌であった。

歌の構成と表現技法

歌の構成は、「ハロー○○」を3回繰り返し、それぞれが、句点で区切られ、つまり、3つの物に対して、一つずつ、挨拶をして、それををのまま記した歌となっている。

このような構成にしようとしたところに、表現の大きな工夫がある。

歌の意味

この歌の意味を考えると、「ハロー」で作者が、それぞれの物に挨拶をしていることがわかる。

作者があいさつをしている対象は、いずれも人ではなく、挨拶の対象は擬人化されたものである。

「ハロー夜」は、夜が訪れたこと。

新たにやってきた「夜」に対して、再び会った「人」であるかのように、言葉をかけている。

「ハロー霜柱」は、足元にあって、この冬、または今日初めて出会ったものであるかもしれない。

「カップヌードル」は食事にしようとしたカップ麺の中にある食材で、他のものと比較すると霜柱は無生物だが、海老は生物である。

さらに、それを「海老たち」とすることで、作者が、唯一の生き物であることに、他の対象物よりも、やや、親近感を感じて呼びかけている感じがしないでもない。

また身体的な距離を言っても、「海老たち」は作者に最も近いところにあるといえるだろう。

夜から霜柱、海老には、この距離感の変化あり、あえて言えばさらに、無生物の広範囲なものから生物である海老への転換も図られている。

作者のいる場は、それらの挨拶の対象の順番から考えれば、夜の道から自室への歌の経路を追うこともできる。

作者の人物像と浮かび上がる孤独

これらの物に挨拶をする作者の人物像も浮かべることができるだろう。

夜や霜柱、海老に至るまで、人ではないものに挨拶をする作者は、おそらく孤独な人だろう。

そして、そのようなものに挨拶をしないではいられない、作者は、強い孤独を感じているのだろう。

カップヌードルが夜の食事であるならば、これは孤食の風景であり、現代の若者のライフスタイルも浮かび上がってくる。

一人暮らしの部屋で、物に話しかけながらわびしい食事をとる若者の自画像ともなる歌である。

古典の短歌のスタイルとの違い

ここまでの時代の短歌なら、ここに「さびし」などの言葉を入れる、あるいは入れなくても、「詠嘆」として、感情を明確に表そうとするのが表現の常套だが、この歌は、作者が何を感じているのかは語られていない。

つまり、古典的な「われ」を主語に添える短歌とは違っている。

また、歌を詠む相手と向き合うという視点で詠まれた歌でもない。

ブログ筆者の感想

読み手とのコミュニケーションを避ける独特な歌のスタイルが、「ハロー海老たち」と相まって、作者の感じている隔絶を体現しているといえる。

読み手である私は、作者がカップをのぞき込んで「ハロー」という様子を、ただ凝視するほかはない。

読み手の中に起こる他者疎外の感覚、それこそが作者の感じた深い孤独感であったのだろう。

それを深刻にならずに軽やかに表現するのも、この作者の特色といえるだろう。

穂村弘について

穂村 弘 (ほむらひろし) 1962年5月21日

日本の歌人。歌誌「かばん」所属。 加藤治郎、荻原裕幸とともに1990年代の「ニューウェーブ短歌」運動を推進した、現代短歌を代表する歌人の一人。批評家、エッセイスト、絵本の翻訳家としても活動している。歌集に『シンジケート』『水中翼船炎上中』他。

――出典:穂村弘『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』

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