教科書の短歌

ゼラチンの菓子をすくえばいま満ちる雨の匂いに包まれてひとり 穂村弘

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ゼラチンの菓子をすくえばいま満ちる雨の匂いに包まれてひとり 穂村弘さんの教材の短歌、この歌の意味、工夫や表現技法を解説します。

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ゼラチンの菓子をすくえばいま満ちる雨の匂いに包まれてひとり

作者と出典:

穂村弘 『シンジケート』

穂村弘の短歌代表作と作品の特徴 ニューウェーブ短歌の旗手

この短歌の全訳と意味

現代語の口語の短歌なので訳は必要ありませんが、意味は

ゼラチンのお菓子をスプーンですくっていると、雨の匂いが満ちてきて、その匂いに包まれて一人であることを実感する

文法解説

語句と文法の解説です

「すくえば」の意味

「すくえば」は順接確定条件。仮定法「すくったならば」ではなく、「すくったので」「すくったら」と訳す。

「いま満ちる」

文語だと「満つる」なので、この歌は口語で詠まれています。「雨の匂い」にかかる連体形

表現技法と句切れ

句切れなし

体言止め

※表現技法とその工夫については以下に解説




解説と鑑賞

穂村弘の処女歌集「シンジケート」より、孤独を詠ったもの。

そのあとの歌集で有名な歌となった

 ハロー夜。ハロー静かな霜柱。ハローカップヌードルの海老たち

とも主題は共通するものがある。

「ゼラチンの菓子」五感に訴える工夫

「ゼラチンの菓子」とは何かというと、ゼリーや、もう少し高級なムースなどもあるが、雨を連想させるものは、やはりゼリーの方だろう。

ゼラチンの菓子のフルフルと震える様子、液体を固めたという特性は、視覚的に、雨に通じるものがある。

さらに、この歌は、それを「雨の匂い」として、視覚から嗅覚へとひろげているところに、表現技法としての大きな工夫がある。

「ゼラチン」の語が雨を連想させるところが、大切なので、たとえば「コーヒーゼリー」のような実体がはっきりしたものはよろしくなく、あえて「ゼラチンの菓子」というぼんやりしたいい方、抽象化した名詞の選択に工夫があるといえる。

「すくえば」のつなぎ方

「すくえば」の順接確定条件は、「すくったらば」の仮定ではなくて、「すくったので」の意味で、以下につながる。

多く古典の短歌に使われる用法だが「すくえば」が、この歌にやや古典的で、かつ古典の短歌に通じるような印象を与える。

「いま満ちる」重要な転換点

「いま」は漢字で書けば「今」であるが、「菓子をすくったそのとたんに」という意味なのだろう。

この「いま」の語は、この歌で、大変重要な副詞と思われる。

似た言葉に、「即」があるが、「いま」を入れてつなぐことで、その瞬間をピンポイント化しており、「すくう」動作と共に、作者に何らかの変化があったことが強調される。

「いま満ちる」は、歌の中央である3句、つまり、57577の中央の5に配置され、「起承転結の「転」に当たり、3句がこの歌の大きな転換点となる。

「雨の匂い」への五感の広がり

上句の「ゼラチン」から、下句はゼラチンのイメージ上の等価物である「雨」に移り、77の下の句は、「雨」を主題として構成される。

作者の示しているのは、「ゼラチン=雨」からさらに進んで、「雨の匂い」という嗅覚がとらえる雨である。

視覚から嗅覚へと、五感を広げていき、その五感をつかさどる総体としての作者が現れる。作者自身もそこで感じている自我を改めて意識した時、自分が一人であること、孤独であることに気が付くのである。

「ひとり」と孤独感

「ひとり」は、本来孤独感とは無関係な数字である。人を「ひとり」「ふたり」と感じるときに、「ひとり」において孤独を感じる人はいない。

この「ひとり」に強い孤独が感じられるのは、歌の状況がそのようにしつらえているからである。

歌の最後の言葉である結句に体言止めで置かれていることから、「ひとり」には余韻が感じられる。

あたかも、作者のいる位置から、雨の降るのが見える窓までの距離までもが、孤独感を増強させる部屋の広さとして見えてくるかのようだ。

再度まとめると、「ゼラチンに始まって、五感の広がり、作者自身の意識と気づき、孤独の認識」、これが起承転結を伴って、一つの歌31文字の中に的確に表現されているところに作者の工夫があるといえるだろう。

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