「あの胸が岬のように遠かった」歌人の河野裕子さんと夫の永田和宏さんの青春時代の交流を描いたNHKドラマが放送されます。
ドラマの内容と代表作短歌をご紹介します。
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「あの胸が岬のように遠かった」 NHKドラマ
歌人の河野裕子さんと永田和宏さんの若き日の交流を描いたドラマが、6月6日に放送されます。
永田さんの本「あの胸が岬のように遠かった―河野裕子との青春―」が原作で、そこから二人の青春の日々を映像化したものです。
このドラマの前半にあたる部分は、以前にも、BSスペシャルで放送されています。
※永田和宏さんと河野裕子さん、それぞれの短歌の作品については
ドラマを主演するのは、柄本佑さんと藤野涼子さん。
永田和宏さんも最後に出演されるようです。
画像を見ると、若き日の永田さんの風貌にも似ているようにも思われますね。
ドラマタイトル
あの胸が岬のように遠かった〜河野裕子と生きた青春〜
放送日時
6月6日(月)午後9時 BSプレミアム・BS4K同時放送!
出演
柄本佑 藤野涼子 ほか
原作
永田和宏「あの胸が岬のように遠かった―河野裕子との青春―」
「あの胸が岬のように遠かった」 あらすじ
内容は、二人の回顧録ですが元になったものは、河野裕子さんのありし日の日記。
NHKの要約だと
日本を代表する高名な歌人のひとり、永田和宏さん(74)がつづった実在の手記をもとに、不器用な男性と、一途に人を愛した女性の青春を描くラブストーリー。
出典:https://www.nhk.jp/p/ts/QG8GVJJ583/
となっています。
二人の短歌を交えながら、あらすじを見てみましょう。
あの胸が岬のように遠かった。畜生! いつまでおれの少年
作者:永田和弘
タイトルとなったのが、永田さんのこの短歌です。
短歌の意味
意味はやや難しいですが、恋人の胸に触れるような大人の恋愛をしたいと思っても、踏み出せないでいる、少年のままの自分がいた。
相手の女性を大切に思い、憧れるがゆえに、その前にいるとまるで、自分が少年のようになってしまう。
純真な若き日の作者の姿がうかがえます。
「岬のように」というのは、「海に突出した陸地のとがってみえる部分を指し、それが女性の胸の比喩となっています。
岬というのは、陸の大きな部分ですので、遠くからではないと目視での確認はできません。
即ち、恋人がそのように、遠くに感じられる、女性の胸はいわば不可侵の部分としてそこにあるというのでしょう。
結婚前の短歌
この歌はいつ詠まれたものかというと、永田和弘処女歌集である『メビウスの地平』(1975年刊行)に収録されています。
永田さんは、今74歳なので、27歳の時の作品となります。
歌は収録よりも以前に詠まれたものと思われ、このような時期を経て、作者の永田さんは、河野さんと1972年に結婚されています。
河野裕子の短歌「二人のひと」
その結婚より以前に、河野さんの次の歌があります。
陽にすかし葉脈くらきを見つめをり二人のひとを愛してしまへり
作者:河野裕子
結婚前に、永田さんの他にもう一人好きな人がいたということで、当然歌集に収録されているので、永田さんはこのことも当然ご存じのことです。
しかし、河野さんが亡くなって初めて、河野さんの日記を読んだことから、永田さんの逡巡がはじまります。
歌は詠んだことがある。しかし、そのことが、日記の中で妻の”肉声”でじかに語られているのを読むのとは、大きな違いがあるでしょう。
永田さんは、河野さんが亡くなってから次のような歌を詠みます。
訊くことはつひになかつたほんたうに俺でよかつたのか訊けなかつたのだ
誰しもがちょっとは思うことかもしれませんが、河野さんの場合は、「二人の人を」となっている以上、それだけに切実な問いであったのかもしれません。
一方、河野さんの方が詠んだ歌がこちらです。
たとへば君ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか
この歌は、河野さんの初期作品の代表的な歌とされています。
さて、そのあとの二人の青春はどのように描かれるでしょうか。
続きはドラマをお楽しみください。
「あの胸が岬のように遠かった」の原作本
原作の本はアマゾンでベストセラー1位の表示があります。
他に河野裕子さんの15ある歌集から選ばれた1500首の決定版アンソロジーはこちら。