砂浜に二人で埋めた飛行機の折れた翼を忘れないでね 俵万智 意味と情景解説  

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砂浜に二人で埋めた飛行機の折れた翼を忘れないでね 俵万智 意味と情景解説

2022年6月13日

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砂浜に二人で埋めた飛行機の折れた翼を忘れないでね 俵万智の教材にも取り上げられる有名な短歌代表作品の意味と情景、句切れなど文法技法を解説します。

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砂浜に二人で埋めた飛行機の折れた翼を忘れないでね

読み:すなはまに ふたりでうめた ひこうきの おれたつばさを わすれないでね

作者と出典

俵万智 『サラダ記念日』

現代語訳

この歌は、現代語で詠まれているため、歌の通りの現代語訳となります。

作者と出典

俵万智 『サラダ記念日』

歌の意味

歌の意味は、作者が誰かに対し、二人で行った思い出を回顧して忘れないように念を押しているという内容です。

以下に詳しく解説します。

句切れと表現技法

・句切れなし

・口語の短歌

・「折れた翼」の語順 以下に解説

 

解説

現代の歌人、俵万智の歌。

現代語で詠まれた歌、さらに結句の「でね」の通り、話し言葉である口語で詠まれた一首。

ここでは、歌の情景を想像してみることとする。

この歌は、俵の処女歌集『サラダ記念日』にある歌で、同歌集には、青春期の恋愛の歌が多く収録されている。

「砂浜に物を埋める」モチーフ

「砂浜に物を埋める」というモチーフは、短歌には他にもあるが、たとえば石川啄木の

いたくびしピストルでぬ
砂山すなやま
砂を指もてりてありしに

などが思い出される。

「砂浜に物を埋める」というのは、青春期の象徴ともいえる行為なのだろう。

比較すると俵の歌の方は、埋まっていたものではなく、「能動的に二人で埋める」行為があったことを示している。

同歌集に恋愛の歌が多いところから、相手が恋愛の相手、恋人やボーイフレンドだと考えてみる。

「飛行機の折れた翼」の暗示するもの

海辺に遊びに行った作者と恋人、しかし、その恋愛は楽しい状況にあるのではない。

なぜそのような印象になるのかというと、それは、「飛行機の折れた翼」という暗示的な言葉の示すものによる。

埋めた飛行機の翼がたまたま折れていたのだろうか。

そうではなくて、飛行機の翼が折れてしまったから、砂に埋めた、と順序を逆に考えてみたらどうだろう。

翼の折れた飛行機はそれ以上は空を飛べない。

作者と恋人も、もうそれ以上は先に進めない、関係を継続できないというのが、「折れた翼」の示すところだろう。

「折れた翼」の表現技法

通常なら、「翼の折れた飛行機」として、飛行機を埋めた」となるべきところを、「飛行機の折れた翼」としている。

短歌の上での表現技法としても、「翼の折れた飛行機」とせずに、「飛行機の折れた翼」と語順を変えることで、翼が焦点化されている。

全体から部分へ視点を狭めていく、これも短歌の上での表現技法のひとつといえる。

「忘れないでね」の逆説

この歌で優れた表現を持つ言葉として、もうひとつ結句の「忘れないでね」がある。

「忘れないでね」ということは、既に過去のものとなってしまったことを表している。

また、「でね」と相手に呼びかけることで、二人の共有した時間と、その親密だった関係も表すことができる。

しかし、「忘れない」との時間をまたぐ言葉を「でね」とつなぐことで、その関係が終了していることを十分に表し得るものとなっている。

それにしても、「折れた翼」というのは残酷で無残なたとえであり、恋愛関係にこのような過酷な面があるということにも改めて驚かされる。

私自身のこの歌の感想

「忘れないでね」ということは、相手に二人の思い出を憶えていてほしいのでしょうか。あるいは、作者が自ら忘れてしまうことを予感しているので、相手も忘れてしまうだろう、なので「忘れないでね」といっているような気がします。大きく言えば恋愛の歌とはいっても、ロマンチックな歌ではなく別れの歌です。そして、相手によっては、あるいは残酷な別れであったかもしれません。そんな感じを起させる短歌です。

俵万智の他の短歌

『サラダ記念日』より他の類似の歌は

捨てるかもしれぬ写真を何枚も真面目に撮っている九十九里

生ビール買い求めいる君の手をふと見るそしてつくづくと見る

ハンバーガーショップの席を立ち上がるように男を捨ててしまおう

いずれも別れを予感させる歌が並んでいます。

俵万智について

俵万智 たわらまち 1962年大阪府生まれ

佐佐木幸綱に師事「心の花」所属の日本の代表的な歌人の一人。

口語短歌によるライトヴァースの草分けとなる歌人。処女歌集『サラダ記念日』は日本の歌集の中でもベストセラーとなる。

近著に、歌集「未来のサイズ」、「牧水の恋」がある。

「牧水の恋」は、牧水の恋愛をめぐる経緯を記したものですが、従来の評伝より堅苦しくなく読めて、収録歌集が多く詳しいのでおすすめの本です。




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