旅終へてよりB面の夏休 黛まどか 季語と意味 表現技法解説  

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旅終へてよりB面の夏休 黛まどか 季語と意味 表現技法解説

2022年6月18日

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旅終へてよりB面の夏休 黛まどかさんが作者の教科書掲載の俳句の意味の解説、鑑賞を記します。

「B面」の比喩と句またがりに特徴がある句です。

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旅終へてよりB面の夏休

現代語での読みと発音:

たびおえて よりびーめんの なつやすみ

作者と出典:

黛まどか まゆずみまどか

現代語訳

旅に出て帰ってきてからそれより後の夏休みはまるでレコードのB面のようだ

 

句切れと切れ字

・句切れなし

・切れ字なし

季語

・季語は「夏休」(「み」の送り仮名はない)
「夏」の季語

形式

有季定型

表現技法

・比喩(隠喩) 「B面」の部分

・句またがり

・体言止め

語句と文法

・終えてより…「より」は「から」と同じ。 「それ以降」の意味

・B面…レコードの裏側を指す


解説

現代の俳人、黛まどかの受賞「B面の夏休」作のタイトルとなった作品。

「B面」の意味

「B面」の表す作者のとらえる夏休みの特徴に理解のポイントがある。

B面というのは、CDではなくレコードのことで、レコードは表であるA面を訊いたら、裏返してB面を聞くという順番になる。

そのため、華やかな主要な曲、いわゆるヒット曲はA面に入ることになっている。

それに対して、B面はA面に次ぐ曲で、地味な印象の曲が収録される。

夏休とB面の比喩

「B面の夏休」とは、「B面の曲のような夏休み」という比喩である。

終わってしまった「旅行」が夏休みのもっとも主要な楽しいイベントであり、それが終わってしまえば、それを超える出来事はない。

つまり、メインイベントの旅行が「A面」であったわけで、もはやすることもない退屈ともいえる残りの日々が「B面」と表現されている。

句またがりの表現技法の効果

「終えてより」が、「終えて/より」と初句と2句に句またがりで配置されることにより、「B面」は句の頭ではなく、2句の3文字目に開始することとなる。

旅終へて/よりB面の/夏休

句の頭に配置される言葉よりも、それ以外に置かれる方が印象は薄くなる。

B面というのは、そもそも印象に乏しい夏休みであるという意味なので、句またがりの配置はそれに一致して効果をあげている。

対して「夏休」は結句の頭から5文字で配置され、結句を丸々使う体言止めで、言葉の印象が強い。

作者の思い

「B面の夏休」には、作者はもはや楽しさを期待していない。

暑い夏のやるせない退屈な日々。

そのまま平板な休暇が続き、夏休みが終わりに至ることを予感しているのだろう。

黛まどかの他の俳句

観覧車より東京の竹の春

かまいたち鉄棒に巻く落とし物

バレンタインデーカクテルは傘さして

黛まどかについて

黛まどか まゆずみ まどか 

1962年神奈川県生まれ。「B面の夏」50句で第40回角川俳句賞奨励賞 受賞。父は俳人の黛執。

句集「てっぺんの星」。




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