海に出て木枯らし帰るところなし 山口誓子 擬人法で特攻隊を表現  

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海に出て木枯らし帰るところなし 山口誓子 擬人法で特攻隊を表現

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海に出て木枯らし帰るところなし 山口誓子の教材の俳句の意味の解説、鑑賞を記します。

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海に出て木枯らし帰るところなし

現代語での読みと発音:

うみにでて こがらしかえる ところなし

作者と出典:

山口誓子

現代語訳

海に出てその上を吹いているこがらしには、帰るところがありはしない

 

句切れと切れ字

・句切れなし

・切れ字なし

季語

・季語は「こがらし」
「冬」の季語

形式

有季定型

表現技法

擬人法

俳句,比喩,解説
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語句と文法

・こがらし…晩秋から初冬の間に吹く強い風。木の枝から葉を落としてしまうという意味で名づけられた

・帰る…カ変動詞の連体形

・ところなし…「ところ」は場所を指す

・なし…「無し」。「ない」の意味の形容詞

 
 

解説

山口誓子が療養のため伊勢に滞在中に詠んだ俳句。

昭和19年で日本は太平洋戦争のさなかにああり。作者の状況や、時局を反映して、寂寥と孤独を表現した。

作者の思い

山口誓子自身は、

この句を作った時、私は特攻隊の片道飛行を念頭に置いていた

と説明している。

特攻隊の片道飛行とは、燃料を積まずに敵の目標物に追突して、命を終えるという戦時中の作戦のことである。

他にも、この句は、作者の胸部疾患の療養中の句であり、ひとり離れた土地に療養中の作者が、心細い気持ちを海の上を吹く風であるこがらしに託して表現したとも考えられる。

下敷きになった俳句

江戸時代の俳句、「こがらしの果てはありけり海の音」池西言水作の俳句が、この句の元になっている。

この俳句の意味

こがらしが陸の上からやがて広大な海の上に出てしまうと、後はあてどなく、さまようのみとなるという作者独自のイメージを表現している。

擬人法

逆に、人と同じようにこがらしに「帰るところ」や目的があるという前提で、ここに擬人法の表現が用いられている。

作者自身の述懐でわかるように、このこがらしは特攻隊の「飛行機」の代替物といえる。

反戦の句はタブーであったので、「こがらし」としたのだが、虚無の際立つ一句となった。

こがらしは、吹き続けることも可能で、命を落とすことはない。

対して特攻隊の隊員は、そのまま飛行機ごと自爆して海の上に散っていった。

帰りの燃料を持たないので、戻ることはあり得なかった。そのような悲惨な作戦への批判がこの句の根底にある。

山口誓子の他の俳句

夏草に機缶車の車輪来て止まる

ピストルがプールの硬き面(も)にひびき

夏の河赤き鉄鎖のはし浸る

炎天の遠き帆やわがこころの帆

山口誓子について

1901-1994 京都府生まれの俳人

「ホトトギスの四S」といわれたが離脱、新興俳句の中心となる。即物象徴による写生が特徴。代表作句集に「炎昼」など。




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