【解説】春の歌 草野心平”蛙の詩人”の擬音の楽しさと表現技法  

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【解説】春の歌 草野心平”蛙の詩人”の擬音の楽しさと表現技法

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草野心平の詩「春の歌」を解説します。

草野新平は蛙を題材にした独創的な詩を書いた比類のない詩人です。

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草野心平は「蛙の詩人」

草野心平は福島県いわき市出身、多くの人が一度読んだら忘れられない印象を持つ詩人だと思います。

その理由の一つは蛙を題材とした作品を多数つくり、「蛙の詩人」と呼ばれたことにあります。

単に蛙を題材としただけではなく、蛙のモチーフと独特なオノマトペ=擬音に大きな特徴があります。

その代表作「春の歌」を読んでいきましょう。

※草野心平の他の詩

【解説】草野心平『ゆき』 の詩

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春の歌 草野 心平

春の歌 草野 心平

かえるは、冬のあいだは土のなかにいて、
春になると地上に出てきます。
そのはじめての日のうた。

ほっ まぶしいな。
ほっ うれしいな。
みずはつるつる。
かぜはそよそよ。
ケルルン クック。
ああいいにおいだ。
ケルルン クック。
ほっ いぬのふぐりがさいている。
ほっ おおきなくもがうごいてくる。
ケルルン クック。
ケルルン クック。

 

詩全体の構成

上の詩をよく読んでみると、一番最初の連の部分は、作者の説明が入っています。

かえるは、冬のあいだは土のなかにいて、
春になると地上に出てきます。
そのはじめての日のうた。

「かえるは」となっているのは、作者から見て「かえるは」なのであって、蛙が自分で「かえるは」とは言いません。

なので、ここは、作者による前書きで、そこからあとは、蛙の語りであることがわかります。

そして2連目からは、「ケルルン クック」という不思議な新しい言葉があることがわかります。

この歌を読んでいて楽しくなってしまうのはなんといっても、蛙がそこかしこに鳴いているのが聞こえてくるような「ケルルン クック」です。

これは蛙の声を模した擬音というものです。

擬音とは

擬音は、擬音語、擬声語、またはオノマトペとも呼ばれ、音や声を表すものです。

たとえば、にわとりのときの声、犬の声や猫の声、ドアが閉まる音、車のブレーキ、これらの音を文字でよくわかるように表すのが擬音で、詩ばかりでなく日常的に使われていますね。

「ケルルン クック」の擬音の特徴

「ケルルン クック」は、蛙の鳴き声ですが、草野心平の考えた独自のものです。

単に蛙の声というだけでなく、「これは草野心平の蛙の声だな」ということがわかるくらい特徴的なのです。

「ほっ まぶしいな。」の「ほっ」

他にも

ほっ まぶしいな。
ほっ うれしいな。

の部分の「ほっ」もこれも、蛙の声、または心の声の一部です。

文章で読む「ああ」というのと同じ、間投詞と呼ばれるものですが、「ほっ」というのも、この作者に独特の言葉となっています。

そして、蛙の心の声「ほっ まぶしいな。/ほっ うれしいな。」のあとに「ケルルンクック」が配置されている部分が、3回繰り返されています。

さらによく見てみると、「ほっ まぶしいな。/ほっ うれしいな。」は蛙の発している言葉であり、「ケルルンクック」は蛙の鳴き声であることがわかります。

蛙の言葉とはいっても、左側は人の言葉に置き換えられた蛙の声であり、「ケルルンクック」は蛙の鳴き声そのものです。

あるいは、蛙語である「ケルルンクック」をその都度翻訳したものが、左のカギ括弧でくくったセリフであるとの想像もできます。

再度全体の構成をまとめると、

となっており、言葉と鳴き声は、このあと2回繰り返されるという構成です。

この詩の感想

「ケルルンクック」の蛙の鳴き声が印象深く、心が楽しくなる詩です。草野心平を初めて読んだ子どもの時の私にも、自由な心の紡ぎ出す言葉は、鮮明に刻みつけられました。心平の言葉はやがて小さな蛙となって私の心に住み続け、心平の詩を読むたびに、詩の中のオノマトペと共鳴するような気がします。

 

草野心平について

草野 心平(くさの しんぺい

日本の詩人。1903年(明治36年)5月12日 福島県生まれ。高村光太郎、中原中也らと交流。「蛙」「富士山」「天」「石」などを主題にした詩や、独特のオノマトペに特徴がある。1984年 いわき市名誉市民、1987年 文化勲章受章。詩集に『第百階級』『凹凸』など。




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