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加賀乙彦さん死去 代表作『宣告』『フランドルの冬』 短歌で歌会始召人

加賀乙彦さんが12日、老衰のため亡くなられました。

加賀乙彦さんは作家、精神科医。21年の歌会始めでは召人として短歌を披露した他にも、歌人である死刑囚との歌集を出版しています。

加賀乙彦の代表作についてと短歌とのかかわりをご紹介します。

加賀乙彦さん死去

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作歌で精神科医の加賀乙彦さんが亡くなりました。

「宣告」「湿原」など骨太な長編小説や、刑事司法や医療をめぐる社会的発言で知られる作家・精神科医で、文化功労者の加賀乙彦(かが・おとひこ、本名小木貞孝=こぎ・さだたか)さんが12日、老衰のため死去した。93歳だった。―出典:朝日新聞

 

加賀乙彦さんの代表作一覧

加賀乙彦さんの代表作は、「宣告」「湿原」などがあげられることが多いのですが、初期作品に長編小説「フランドルの冬」があります。

  • 「フランドルの冬」
  • 「宣告」
  • 「湿原」
  • 『ある若き死刑囚の生涯』

 

「フランドルの冬」のあらすじ

「フランドルの冬」は北フランスの精神病院が舞台。作者の加賀さんが政府給費留学生として勤めた病院です。

そこで働く精神科医たちの心の闇を描き出す深い内容の小説です。

この作品は芸術選奨新人賞を受賞した。1972年、新潮文庫に収録され、作者の名前を世に知らしめるところとなりました。

北フランスの精神病院で生活する人々の孤独、愛の不在、生への倦怠を実存的に捉え、著者の名前を一躍不動のものにした。

本作は、加賀がフランス政府給費留学生として北フランスのフランドル地方、パ=ド=カレー県の県立サンヴナン精神病院の内勤医として働いていた時代の体験に基づき、創作を加えたものである。1960年、東京大学附属病院精神科助手を務める傍ら、作品の稿に着手した。1961年、戸隠高原の旅館にこもり、原稿を書き継ぐ。

「宣告」のあらすじ

もうひとつ後年の代表作としてあげられるのが死刑囚の正田 昭をモデルとした「宣告」です。

これは、死刑囚の犯罪から死刑までの心理を追うという内容で、加賀さんの若い頃に東京拘置所に医務官として勤務した体験から描かれたものです。

加賀さんは敬虔なクリスチャンですが、キリスト教信者となった経緯についてはこの体験が大きかったようです。

のちに加賀は、正田について、「私は正田昭からキリスト教を学んだと言えるでしょう」、「不思議なことでした。死刑囚からキリスト教を教わり、そして信者になる。まさに私の恩人の一人」と発言している 出典:フリー百科事典wikipedia「正田昭」

 

「宣告」は79年に日本文学大賞を受賞しています。

 

「湿原」のあらすじ

もう一つの代表作「湿原」は、安保闘争を舞台に、前科と精神病に悩む男女の恋愛と犯罪をモチーフにした小説です。

犯罪的な暗い過去を持つ自動車整備工の雪森厚夫(49才)は、病める神経に苦悩している女子大生池端和香子(24才)に愛情を抱きはじめた。1969年1月、彼女はT大生の恋人守屋牧彦の影響で大学紛争に参加、牧彦はT大学を占拠し、機動隊や和香子の父池端教授と戦い敗退した。’69年2月、雪森と和香子は、新幹線爆破事件の容疑者として逮捕された。悪魔的な捏造で引き裂かれる魂を描く。―アマゾンの内容紹介より

 

加賀乙彦と短歌

加賀乙彦さんと短歌とのかかわりは、まず、加賀さんは室生犀星の室生犀星とは7親等の血縁である他、歌人の佐佐木幸綱さんと遠縁であることもわかっています。

佐佐木幸綱さんと遠縁と判明

加賀さんの父孝次さんの父で旧加賀藩士だった貞正の先妻友が、財団法人日本学術振興会の理事長などを務めた桜井錠二の妻と姉妹であることが判明。

桜井の次女文子と、日本化学会会長を務めた化学者の鈴木庸生(つねお)の間に生まれた由幾さんと加賀さんは血縁関係こそないが、系図の上では「はとこ」にあたり、由幾さんの息子が佐佐木幸綱さんに当たります。

加賀乙彦の歌会始の短歌

21年の歌会始めには、召人として次の短歌を披露。

召人(めしうど)とは、一般から招待されて、歌を詠む役割の人のことです。

千年を生きむ樟(くす)の木が実在し巡りて子らは駈けつこをする

作者 加賀乙彦

 

関連記事:

歌会始の儀2021年 召人・選者と入選者の短歌作品

 

死刑囚の短歌集を出版

そしてもう一つ、死刑囚の歌人である純多摩良樹(すみたまよしき)と精神科医として接触をしたことから、加賀さんは『ある若き死刑囚の生涯』をまとめました。

純多摩は死の直前に、精神的支柱と仰いでいた作家の加賀乙彦に歌集稿を託し、加賀さんは遺族に配慮した結果20年後に歌集を筆名で出版。

下のような短歌が含まれています。

極刑は已むなきものと告げにつつ裁判長は杳(とほ)き眼をする

アルミ食器の底より現はれし小魚の瞳(め)のやさしきにいたはりて食ふ

バイブルの〈死に至る罪〉を目にとめて忙しき獄のひととき黙す

鴉さわぐ獄舎のめざめいづこにも夭死はあるぞ友よおちつけ

 

主にさきに述べた正田昭と純多摩良樹、これらの死刑囚との接触の経験から書かれたのが小説『宣告』(新潮文庫)です。

加賀さんは、歌集の『死に至る罪』でも序文を記しており、死後二十年を経てこの歌集の出版に尽力されました。

 

きょうの日めくり短歌は、加賀乙彦さんの逝去の報に、加賀さんの代表作と短歌とのかかわりについて記しました。

・日めくり短歌一覧はこちらから→日めくり短歌




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