北条泰時の和歌  

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北条泰時の和歌

2023年1月2日

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北条泰時が父の死を詠んだ歌「山の端に隠れし人は見えもせで入りにし月はめぐり来にけり」とその返歌をご紹介します。

終了した『鎌倉殿の13人』を思い出しながらお読みください。

北条泰時の有名な和歌

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北条泰時が父の死を詠んだ歌と、その返歌をご紹介します。

北条泰時はNHKの大河度らあ、『鎌倉殿の13人』の登場人物で、先には源実朝との和歌をめぐるやり取りが印象に残っています。

大海の磯もとどろによする波われて砕けて裂けて散るかも 源実朝

 

今回ご紹介するのは、北条泰時が父の死を悼んで詠んだ月の和歌で、送った相手が蓮生法師。

その返歌を含めた問答歌です。

北条泰時の和歌から見てみましょう。

 

山の端に隠れし人は見えもせで入りにし月はめぐり来にけり

読み:やまのはに かくれしひとは みえもせで いりにしつきは めぐりきにけり

作者

北条泰時 ほうじょうやすとき

出典

新勅撰和歌集 雑三

意味

山の向こうに行ってしまった人にはもう会えないが、山向こうに沈んだ月は再び巡ってきたのだよ

解説

この和歌の「月」とは亡くなった父、北条義時のことです。

この歌にはその背景がわかる詞書が記されています。

「父身まかりて後、月あかく侍りける夜、蓮生法師がもとにつかはしける」

この意味は、

父が亡くなった後の月が明るく照っている夜に呼んで、蓮生法師に書き送った

というものです。

歌の主要な部分は、上句の部分「山のはにかくれしの人は見えもせで」のところです。

この「人」というのが父で、「かくれし」というのは、「おかくれになった」というように、人が亡くなったことを迂遠に表す表現です。

すなわち、父が亡くなったこと、もう会えないという事実を述べて、自らの悲しみを表しているのです。

 

北条泰時への返歌

この歌は蓮生法師(れんしょうほうし)に送られました。

送られた法師とはどんな人かというと、俗名宇都宮 頼綱(うつのみや よりつな)。

藤原定家と親交がある歌人でもあり、wikipedeiaには

建久5年(1194年)2月には北条義時の嫡男金剛(後の泰時)の元服の儀に参列する。―出典:宇都宮 頼綱 フリー百科事典 wikipedeia

とあるので、泰時と親しい間柄でおそらく和歌の師のような立場の人物であったと思われます。

泰時の和歌に対して下の歌を「返し」、返歌として詠みました。

 

隠れにし人の形見は月を見よ心のほかにすめる影かは

作者:蓮生法師(れんしょうほうし)

俗名:宇都宮 頼綱(うつのみや よりつな)

出典

新勅撰和歌集 雑三

意味

父上の形見として月をごらんなさい。

お父様はあなたの心以外のところには住んでいないのだから

 

蓮生法師の和歌解説

蓮生法師の和歌の意味は、「月が隠れてしまった」、つまり父がいなくなって寂しいと書き送った義時の歌に対して「その月が父上の形見ですよ」と呼び掛けるのものです。

心の中に父がいるとして、その父のイメージを月の光に例えています。

この法師の言葉に泰時は強く慰められたに違いありません。

この和歌を紹介した朝日新聞のコラムによると

義時が亡くなった時、泰時は承久の乱の戦後処理で京におり、死に目に会えなかった。訃報を受けて鎌倉に戻ると3代執権に就任する。幕政を主導する中で、鎌倉のために粉骨砕身した父の姿を思い出すこともあったかもしれない ―朝日新聞山本みなみの鎌倉からの史(ふみ)

父の最後に傍にいられなかったその悔悟と不運のために、上のような悲しみの歌が生まれたに違いありません。

蓮生法師について

この返歌を記した蓮生法師は、実は百人一首の成り立ちに大きく影響しています。

百人一首はどうしてできたのかというと、今のように歌がるたが目的ではなくて、小倉山にある家の障子の絵として飾ることが目的でした。

屏風歌と呼ばれるジャンルの和歌になりますが、元々の百人一首は色紙に絵と歌を記し、それを屋敷の障子や壁などに飾って楽しむためのものでした。

そしてこの屋敷の持ち主が、鎌倉幕府の御家人で歌人でもある宇都宮蓮生(宇都宮頼綱)。

この宇都宮に依頼を受けた藤原定家が選んだものが百人一首の最初で、この屏風歌がつまり、後の百人一首なのです。

百人一首とは 百人の和歌を一首ずつ集めた秀歌撰

 

蓮生法師(宇都宮頼綱)の和歌は、勅撰和歌集には上の歌を含む新勅撰和歌集の3首と合わせて39首が選ばれています。

新勅撰和歌集の撰者も藤原定家である他に、蓮生法師の娘は低下の息子の為家に嫁いだという間柄です。

和歌に秀でた法師と義時のこの問答歌は、藤原定家によって選ばれた『新勅撰和歌集』に収録されています。




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