和歌

冬の和歌代表作20選

冬の和歌には、雪や霜などの冬の事物、大晦日や年明けなどのイベントが詠み込まれた歌が多くみられます。

冬の和歌を、万葉集、古今集の時代の和歌の代表作からまとめました。

冬の和歌まとめ

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目次

わが背子と二人見ませば幾許(いくばく)かこの降る雪の嬉しからまし

読み:わがせこと ふたりみませば いくばくか このふるゆきの うれしからまし

作者:光明皇后

現代語訳:

夫と共にこの雪を見たら、どんなにか雪も喜ばしくうれしいことであろうに

解説

光明皇后の有名な歌。

夫の留守の心境で、はかない雪に夫を乞う気持ちが表されます。

詳しい解説記事はこちら
わが背子と二人見ませば幾許かこの降る雪の嬉しからまし『万葉集』光明皇后

 

わが里に大雪降れり大原の古りにし里に降らまくは後

読み:わがさとに おおゆきふれり おおはらの ふりにしさとに ふらまくはのち

作者

天武天皇 2-103

現代語訳

私の里には大雪が降り積もったよ あなたの居る大原の古びた里に雪が降るのはまだこの後だろう

解説

天武天皇が、里下りをしていた藤原夫人にたまわった歌。

ありのままの歌ですが、「大雪降れり-大原の古りにし」に続く「降らまく」と、同音反復の工夫が見られます。

 

小竹が葉のさやぐ霜夜に七重へ着る衣にませる子ろが肌はも

読み:ささがはの さやぐしもよに ななえかる ころもにませる ころがはだは(わ)も

作者

防人 20-4431

現代語訳

笹の葉に冬の風が吹きわたって音するような、寒い霜夜に、七重もかさねて着る衣の暖かさよりも、恋しい女の肌の方が温かい

解説

防人が離れた恋人、または妻を思って歌う歌です。

上句、「ささがはの さやぐ しもよ」のサ行のかすれるような連続は、まるで七重に重ねた、着物の衣擦れを聞くような感じです。

 

旅人の宿りせむ野に霜降らば吾が子羽ぐくめ天の鶴群

読み:たびびとの やどりせんのに しもふらば わがこはぐくめ あめのたづむら

作者と出典

遣唐使随員の母 9-1791

現代語訳

旅をする人が野宿する野に霜がふるほど寒くなったら、空飛ぶ鶴の群れよ天から降りて私の子を包んで守ってやってください

解説

遣唐使に子を出した母の歌。難波の港の出立の時に贈られたといいます。

必ずしも冬とは限りませんが、「霜ふらば」はもちろん、羽のあたたかさで、寒さから守ってやってほしいということでしょう。

そこから転じて、寒さだけではなく、海を渡る子の旅の無事を深く願う表現が、読む人の胸を打ちます。

「天の鶴群」(あめのたづむら)という言葉は、岡野弘彦が自らの歌集のタイトルとしており、忘れられない言葉であり、歌の一つです。

以上は万葉集の冬の代表作の和歌ベスト5となる5首です。

※詳しい解説は

万葉集の有名な冬の和歌代表作品5首

 

万葉集の冬の恋愛の和歌

万葉集の冬の恋愛の和歌も切ない情緒が漂います。

一目見し人に恋ふらく天霧(あまぎらし)零(ふ)り来る雪の消(け)ぬべく念ほゆ

作者と出典: 作者不詳 万葉集巻12・2340

現代語訳:

一目見た人に恋をすると、空を曇らせて降ってくる雪が消え入りそうに思われるのだ

解説

この歌では消えそうな雪が、自分の恋に落ちた時の心の様子に例えられています。

 

降る雪の空に消ぬべく恋ふれども逢ふよしなしに月ぞ経にける

作者と出典: 作者不詳 10.2333

現代語訳:

降る雪が空に消えてしまうように、わが身が消えるほど恋しく思い続けているのだが、逢う手立てがなく、日月が立ってしまった

解説

降る雪の空に消ぬべく」は、降る雪が空に消えるように」の意味で、「身」は体のことですが、心身一如、これが心を表すということに注意しましょう。

 

道に逢ひて笑まししからに降る雪の消なば消ぬがに恋ふといふ我妹

作者と出典:聖武天皇 巻4.624

現代語訳:

道で逢って微笑みかけただけで降る雪が消えてしまうように恋しいと言う愛しい人よ

聖武天皇の恋の和歌。

詳しい解説は

道にあひて咲まししからに降る雪の消なば消ぬがに恋ふといふ吾妹 聖武天皇

 

万葉集の冬の雪の短歌

他にも雪の短歌では 柿本人麻呂作が有名です。

梅の花が雪のように見えるというので、季節はもう春に近いかもしれません。

妹が家に雪かも降ると見るまでに幾許(ここだも)まがふ梅の花かも

作者と出典:柿本人麻呂 5.844

現代語訳:

愛しい人の家に雪が降っているのかと思うまでに、梅の花が散っている

※万葉集の他の雪の短歌は

万葉集の雪の短歌・和歌一覧 

冬の和歌2 古今和歌集

ここからは古今和歌集の冬の和歌をご紹介します。

 

山里は冬ぞ寂しさまさりける人目も草もかれぬと思へば

作者と出典

作者:源宗于朝臣 (みなもとのむねゆきあそん)

出典:小倉百人一首28 古今集 315

意味

とりわけ冬に入って、山里は寂しさがつのってくる。人も来なくなり草も枯れてしまったのだなと思うと

山里は冬ぞ寂しさまさりける人目も草もかれぬと思へば 源宗于朝臣

 

ゆく年の惜しくもあるかなますかがみ見る影さへに暮れぬと思へば

読み:ゆくとしのおしくもあるかな ますかがみ みるかげさえに くれぬとおもえば

作者:

紀貫之 「古今集」

歌の意味

「行く年が惜しまれることよ。鏡に映って見える自分の姿までも、暮れ老いてしまったと思えば」

この場合の「暮れ」は年の暮れと、自分の老いとを重ねています。

お祝いではなく、残り少なくなった年月への感慨を詠うものです。

 

明日よりは春の初めと祝ふべし今日ばかりこそ今年なりけれ

作者:

藤原公実(ふじわらのきんざね) 『堀河百首』

歌の意味

「明日は年明け、春の初めと祝う日であり、今年は今日だけとなった」という事実を述べて、年明け前の感慨を詠ったものです。

 

隔て行く世々の面影かきくらし雪とふりぬる年の暮れかな

現代語での読み:へだてゆく よよのおもかげ かきくらし ゆきとふりぬる としのくれかな

作者と出典

藤原俊成女(ふじわらしゅんぜいのむすめ) 新古今集 693

和歌の意味

年の暮れに、私から遠ざかっていく一年の思い出の数々は、この降る雪のように茫々として古く昔になってしまう

解説

「ふる」に「雪が降る」と「古くなる」意味での「古る」の掛詞が駆使されながら、年末の感慨を詠っています。

 

おのづからいはぬを慕ふ人やあるとやすらふ程に年の暮れぬる

現代語での読み:おのずから いわぬをしたう ひとやあると やすらうほどに としのくれぬる

作者と出典

作者:西行法師 691番  山家集 西行法師家集

和歌の意味

言葉は掛けないが、ひょっとしてついてくる人もあろうかと、ぐずぐずしているうちに年も暮れてしまったよ

解説

西行法師らしい、人への憧憬と年の暮れを重ねて一年を振り返ります

この歌の解説記事は

おのづからいはぬを慕ふ人やあるとやすらふ程に年の暮れぬる 西行法師

 

今日ごとに今日や限りと惜しめどもまたも今年に逢ひにけるかな

現代語での読み:きょうごとに きょうやかぎりと おしめども またもことしに あいにけるかな

作者と出典:

藤原俊成 新古今集706

和歌の意味

毎年、暮のこの日になるたびに、今日も限りかと惜しむのだが、またまた今年の今日に会えたことだ

解説

この時代には長生きをした藤原俊成ならではの作品ですが、若い人にも新しい年の感慨は変わりませんね。

この歌の詳しい解説は
今日ごとに今日や限りと惜しめどもまたも今年に逢ひにけるかな 藤原俊成

年の暮れの和歌まとめは

年の暮れの和歌・短歌 西行 藤原俊成 俊成女 新古今集他

大晦日の和歌

大晦日の短歌といえば 藤原公実の作品がわかりやすいです。

 

明日よりは春の初めと祝ふべし今日ばかりこそ今年なりけれ

現代語での読み:あすよりは はるのはじめと いわうべし きょうばかりこそ ことしなりけれ

作者と出典:

藤原公実 後撰選集218

和歌の意味

明日からは春の初めと祝おう 今日だけが今年となった

ゆく年の惜しくもあるかなますかがみ見る影さへに暮れぬと思へば

読み:ゆくとしのおしくもあるかな ますかがみ みるかげさえに くれぬとおもえば

作者:

紀貫之 「古今集」

歌の意味

行く年が惜しまれることよ。鏡に映って見える自分の姿までも、暮れ老いてしまったと思えば

この場合の「暮れ」は年の暮れと、自分の老いとを重ねています。

大晦日と年明けの短歌 万葉集と古今集他 大伴家持 紀貫之

 

新年の和歌

万葉集で最も有名な新年の和歌が下の歌です。

 

新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事

読み:あらたしき としのはじめの はつはるの きょうふるゆきの いやしけよごと

作者

大伴家持 1-48

現代語訳

新しい年の初めの初春の今日降る雪のように、積もれよ、良いことよ

解説

大伴家持による賀歌、つまり新年のお祝いの歌です。部下たちの前で、元旦の宴会で披露されました。

この歌は万葉集の一番最後に収録されています。

 

 

新しき年の始めに思ふどちい群れて居れば嬉くもあるか

作者

道祖王 (ふなとのおおきみ) 19・4284

現代語訳

新年の初めに、気の合う者同士が集まっているのは、なんとうれしいことだろうか

解説

こちらは、本当の新年詠として、万葉集の和歌の中でもよく参照される作品です。

 

正月立つ春の初めにかくしつつ相し笑みてば時じけめやも

読み:むつきたつ はるのはじめに かくしつつ あいしえみてば ときじけめやも

作者

大伴家持 18-4137

現代語訳

正月、新春の初めに、このようにしつつ互いに微笑み合っていられるのは、時節にふさわしいものですよね

解説

こちらも正月の会合でのお祝いの歌です。

万葉の時代には会合では必ず歌が披露されており、和歌は大切な役目がありました。

大晦日と年明けの短歌 万葉集と古今集他 大伴家持 紀貫之

 

 




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