恋わびて泣く音にまがふ浦波は思ふ方より風や吹くらむ『源氏物語』  

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恋わびて泣く音にまがふ浦波は思ふ方より風や吹くらむ『源氏物語』

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恋わびて泣く音にまがふ浦波は思ふ方より風や吹くらむ 作者は光源氏の『源氏物語』から有名なよく知られた和歌を現代語訳付きで解説を記します。

『源氏物語』の作者はNHK大河ドラマの『光る君へ』のヒロイン紫式部です。

恋わびて泣く音にまがふ浦波は思ふ方より風や吹くらむの解説

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現代語での読み:こいわびて なくねにまがう うらなみは おもうかたより かぜやふくらん

作者と出典

『源氏物語』須磨巻(すまのまき) 作者:紫式部

『源氏物語』の中の作者:光源氏

現代語訳

恋しさに泣く声にも似る海辺の波音は、私が恋しく思ふ方角から風が吹くためにそう聞こえるのだろうか

語句の解説

語句の解説です

まがう

まがう・・・入りまじる。 入り乱れる。 浦波の音と泣き声とが入りまじって区別できない様子。

主語が光源氏なら声は現実の音だが、都の人の鳴き声なら、その場にない想像上の音となる。

恋わびて

恋わびて・・・「恋ひ侘ぶ」が基本形の動詞。

意味は、「恋しさのあまり思い悩む」

思ふかた

「かた」は方向を指す。この場合は「思う都の方向」の意味

風や吹くらむ

「や・・・らむ」は連語。

ここでは疑問をこめた原因の推量の意を表す

歌が詠まれた場所

光源氏が須磨にあって詠んだ歌。

須磨は、摂津国の地名で、現在の兵庫県神戸市須磨区にあたります。

秋の夜半、住まいを遠く離れた土地で耳慣れぬ激しい波の音を聞き、心細く眠れぬまま遠く離れて会えない相手を恋い慕う気持ちで詠まれた歌です。

光源氏が須磨へ行った理由

都を離れた源氏は、須磨の地に蟄居することとなりますが、その理由は朧月夜との恋愛でした。

朧月夜は帝である朱雀天皇の妻であり、権力者右大臣の娘という女性でした。

なので、彼女との恋愛関係が発覚して、弘徽殿大后の怒りをかうなどして、都にいられなくなったのです。

また、桐壷院が亡くなったため、政治的な後ろ盾を失ったことが背景にあります。

歌の2通りの解釈

この歌には2通りの解釈があるとされています。

「恋わびて泣く音にまがふ浦波は思ふ方より風や吹くらむ」の初句にある「恋わびて泣く」の主語を誰とするかで、その後の解釈が違ってきます。

  • 主語1・・・光源氏自身
  • 主語2・・・都の人々

 

その訳を2通りあげると

主語が光源氏自身の意味と現代語訳

華やかなる都とそこに別れてきた思い人(朧月夜)を恋しがって泣く声のような浦波の音は、その人のいる都の方から風が吹いてくるためのだろうか

主語が都の人の意味と現代語訳

都の人が私を恋しがって泣いているかのような浦波の音は、都の方から吹いてくる風が運んでくるためだろうか

和歌の構成

歌全体の主語が「浦波は」だが、主語述語が揃っているのは、「風や吹くらむ」の方であり、「浦波」に対応する述語はその後にはありません。

浦波が鳴き声に似るその原因は、風のせいなのだろうかという意味ですが、「浦波は」につながる部分は省略されているため、省略部分を補いつつ全体の意味を取ることになります。

『源氏物語』の作者について

紫式部は、本名は藤原香子(ふじわらの かおるこ/たかこ/こうし)とされています。

藤原為時(ふじわらのためとき)の娘で、藤原道長の要請で宮中に上がり、一条天皇の中宮彰子に女房、つまり女官として仕えました。

身分の高い女性である上、大変な才女で、代表作である『源氏物語』の他にも『紫式部日記』、百人一首に採られた他に和歌が多く詠まれており、歌人としても活躍。

中古三十六歌仙および女房三十六歌仙の一人にも選ばれています。

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