ちはやぶる神の斎垣も超えぬべし大宮人の見まくほしさに【意味と解説】  

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ちはやぶる神の斎垣も超えぬべし大宮人の見まくほしさに【意味と解説】

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ちはやぶる神の斎垣も越えぬべし大宮人の見まくほしさに の和歌の現代語訳と解説を記します。

この歌は「ちはやぶる神の斎垣も越えぬべし恋しき人の見まくほしさに」として、NHKの大河ドラマ『光る君へ』に言葉の一部を変えて使われました。

ちはやぶる神の斎垣も越えぬべし恋しきの見まくほしさにの和歌

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「ちはやぶる神の斎垣も越えぬべし恋しき人の見まくほしさに」の和歌は、NHKの大河ドラマ『光る君へ』の最後のシーンで、藤原道長がドラマの主人公のまひろこと紫式部に思いを伝えるために詠んで贈った歌となっています。

恋愛の和歌のことを、「相聞(そうもん)」と呼びますが、この歌の内容もその通り恋愛の歌です。

和歌の元の歌

この和歌の元の歌は

ちはやぶる神の斎垣も越えぬべし大宮人の見まくほしさに

です。

伊勢にある神宮の斎宮の女房が、伊勢に勅使として来た在原業平とされる主人公の男性に恋をしたときに詠んだものです。

つまり、この和歌の元の歌の作者は女性ですが、『光る君へ』ドラマの中では、男性である藤原道長が女性に送った和歌という設定になっています。

和歌の作者と出典

この歌の作者は伊勢の斎宮の女房、つまり斎宮におつかえする人で、歌の記された本は『伊勢物語』。

その第71段「神のいがき」にある和歌です。

『伊勢物語』は在原業平(ありわらのなりひら)とされる人物が主人公の有名な古典の作品です。

解説

この和歌の内容を元の和歌を踏まえて見ていきましょう。

歌の読み方

ちはやぶる神の斎垣も越えぬべし大宮人の見まくほしさに

現代語での読みは

ちはやぶる かみのいがきも こえぬべし おおみやびとの みまくほしさに

となります。

和歌の現代語訳

ドラマ用にアレンジされた「ちはやぶる神の斎垣も越えぬべし恋しき人の見まくほしさに」の、ドラマの中で提示された現代語訳は

越えてはならない神社の垣根を踏み越えてしまうほど、恋しいお前に会いたい

となっていました。

元の歌の意味だと

越えてはならない神社の垣根もタブーも踏み越えてしまいたい。宮廷にお仕えする貴方にお目にかかりたいばかりに

となります。

和歌の意味

「神の斎垣も越えぬべし」というのは、この歌の作者は伊勢の斎宮に使えるおつきの人で役職名が「女房」という女性です。

伊勢の斎宮は神に使える女性なので恋愛はもちろん、生涯結婚はできませんでした。

そのおつきの人も同じ身の上で、恋愛は禁止され、そのため自由に好きなところに行けるという暮しでもありませんでした。

「神の斎垣を越える」というのは、単純に神社の塀の外に出るということではなくて、「禁じられている恋愛に身を投じる」という意味があります。

「神の斎垣」は神職の人に限らない表現ですが、この歌においては斎宮という特殊な立場のおつきの人であるからこそ、禁忌が一層見に迫る事物であり表現となっています。

和歌の語句の意味

和歌の語句の解説です

「ちはやぶる」は枕詞

「ちはやぶる」というのは、「神」の前に置かれる枕詞です。

最初から「神の・・・」と始めるよりも、厳かな雰囲気が出る上、決まった表現なので、聞いている人は「ああ、これは神様に関する事柄出てくる歌だ」という意識が強くなります。

なお、この「ちはやぶる」を使った、同じ『伊勢物語』の在原業平の歌で最も有名なのが下の歌です。

「神の斎垣」

「神の斎垣(いがき)」の「いがき」の「い」とは「い」は「斎み清めた神聖な」の意の接頭語の意味で、そこから「いがき」は

神社など、神聖な場所の周囲にめぐらした垣。

のことを言います。

それゆえ「みだりに越えてはならない」とされていました。

「神のタブーを越えて恋愛に走る」ということですので、このような読み方は、読み手の恋愛の心の傾斜と相手への強い思慕を感じるでしょう。

斎宮の女房であれば、発覚すれば職を辞さなければならない結果になるかもしれません。

それでも相手に会いたいというのが、この「斎垣を越える」という行為の意味になります。

越えるべし

「越えるべし」の「べ」は「当然・義務・予定」を表す助動詞で、「…するはずだ。当然…すべきだ。…しなければならない。」の強い意志と必然性を表します。

「会いたいので、それゆえ越えなければならないのだ」という強い思いが表されています。

大宮人の意味

「恋しき人」は元の歌では「大宮人」で、大宮は皇居の尊称で、宮廷にいる人、宮中に仕える役人というのがその意味です。

元の歌では、在原業平を指しますが、ドラマでは歌の相手はまひろなので、この語は「恋しき人」に置き換えられています。

元の歌であれば、天皇に命じられた巫女である斎宮、そのおつきの人である女房が、同じく天皇に使える役人である男性と恋愛関係になるというのは、男性側からいってもタブーであり、この二人が恋愛関係になるのは、二重のタブーであるわけなのです。

見まくほしさには「会いたい」の意味

「見まくほしさに」の「見る」は、「相手に会う」と同じ意味です。

「まく」は、推量の助動詞「む」のク語法で、意思を表し「 だろうこと」「しようとすること」。

「ほしさ」は「欲しい」、「したい」の意味の名詞形です。

「あなたに会いたいと願うその理由で 斎垣をこえる」という意味です。

和歌の構成と修辞法

この和歌は「ちはやぶる神の斎垣も越えぬべし」で一度切れます。

これを三句切れと言います。

続く「恋しき人の見まくほしさに」は、上句の「越える」行為の理由となる真情を述べている部分で、「越えぬべし」にかかる副詞節です。

このような句の順番を倒置法と言います。

「ちはやぶる」の和歌まとめ

藤原道長と紫式部が恋愛関係になるのかどうかは、今後のドラマを見守りましょう。




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