岡に来て両腕に白い帆を張れば風は盛んな海賊の歌 斎藤史
斎藤史の代表的な短歌作品の現代語訳と句切れ、表現技法について記し ます。
教科書や教材に取り上げられる作品です。
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岡に来て両腕に白い帆を張れば風は盛んな海賊の歌
読み:
おかにきて りょううでにしろい ほをはれば かぜはさかんな かいぞくのうた
作者と出典
斎藤史 『魚歌』
現代語訳と意味
丘の上で白い袖を船の帆のように広げると、勢いよく吹き付ける風が海賊の歌のように思う
語句の意味と文法解説
- 張れば…「ば」は接続助詞 順接仮定条件 「・・・すると」「したので」の意味
- 盛んな…風の勢いの強い様子
- 海賊の歌…風の比喩
句切れと修辞・表現技法
- 句切れなし
- 体言どめ
解説と鑑賞
斎藤史の1940年発行『魚歌』にある作品で、教科書や教材に取り上げられている。
当たりを見渡す丘の上で、風を両腕に受ける時のすがすがしい気持ちを詠っている。
船の比喩と置き換え
丘の上から見渡す様子が大海原、自らの姿を船として、両腕の下の衣服のはためきを、船の帆にそれぞれ比喩として見立てている。
そしてその時風の音を、「海賊の歌」とする想像がある。
海賊のイメージの奔放さは、すなわち作者の若さであろう。
向かってくる風をものともせずに、立ち向かう時の、心の張りが若々しさを伝えて来る。
斎藤史『魚歌』の他の作品
- はとばまであんずの花が散つて来て船といふ船は白く塗られぬ
- 遠い春湖(うみ)に沈みしみづからに祭りの笛を吹いて逢ひにゆく
- 濁流だ濁流だと叫び流れゆく末は泥土か夜明けか知らぬ
- 額(ぬか)の真中(まなか)に弾丸(たま)を受けたるおもかげの立居に憑きて夏のおどろや