み空行く月の光にただ一目相見し人の夢にし見ゆる 作者は安都扉娘子、万葉集の代表的な相聞、恋愛の歌の現代語訳と意味の解説を記します。
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み空行く月の光にただ一目相見し人の夢にし見ゆる
読み:みそらゆく つきのひかりに ただひとり あいみしひとの ゆめにしみゆる
現代語訳:
空を渡る月の光の下、一目だけ見えたあの方が夢にまで出てくるのですよ
作者と出典:
安都扉娘子(あとのとびらのをとめ)
万葉集 巻4-710
語の解説:
・み空…「み」は接頭語 「お空」と同じ
・月の光に…助詞「に」のニュアンスに注意
・相見し…「相」は接頭語 「たがいに」の意味
・夢にし…「し」は強意の助詞
・見ゆる…ヤ行下二段活用の連用形
句切れと表現技法
- 句切れなし
- 連用止め
解説と鑑賞
作者は安都扉娘子(あとのとびらのをとめ)という女性で、万葉集にはこの一首のみが収録されている。
「ただ一目」とあることから、深い中ではなく、たまたま顔を見合わせる、対面の機会があった男性に恋心を抱いたという意味の歌。
まだ、若い作者の、おそらくは初恋、いわゆる一目ぼれの歌となっている。
「月の光に」の「に」は現代語の「で」に相当する助詞で、月明かりがあったために、月明かりの下での意味。
ただし、若い女性が夜間に外出することはこの時代には稀なので、空想の歌とする説もある。
「夢にし」の「し」は強調なので、起きて目覚めているときはもちろんのこと、夢にまでも出てくるという訴えになるのだろう。
そのくらい、思いが強いというアピールというよりも、相手の魅力を同時に強調、初めて会った男性への恋心が初々しい一首となっている。
作者 安都扉娘子について
安都扉娘子(あとのとびらのをとめ)
大伴家持(やかもち)(718-785)をとりまく女性のひとり。歌1首が「万葉集」巻4にみえる。