路地と小路の短歌 6月2日は「路地の日」  

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路地と小路の短歌 6月2日は「路地の日」

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路地は市街地にある狭い道のことで、6月2日は「路地の日」に制定されています。

路地の日にちなみ路地の短歌、小路の短歌を集めてみました。

路地の日

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路地は正確に言うと「密集市街地に形成される狭い道」を指す言葉です。

6月2日は「ろ」「じ」の語呂合わせから、路地の日に制定されています。

路地の短歌

今のように道路が整備される前は、もっといろいろなところに路地がありました。

路地は人の生活の様子が伝わる場所でもあり、昔はそれだけ人と人の距離が近かったような気がします。

というのも、家と家の距離が物理的に近かったこともあり、それをつなぐのが路地でした。

皆が自力で自分の家が持てるようになると、生活の場は市街地ではなく郊外になり、敷地は広く、路地は車社会に合わせて道路に変わっていきました。

今は少なくなった路地や小路は、懐かしく郷愁を覚える場所ともいえます。

きょうの日めくり短歌は、路地や小路が詠まれた短歌をご紹介していきます。

うどん売る声たちまちに遠くなりて我が家の路地に霙(みぞれ)ふる音

作者は島木赤彦。

家が密集しているところには、様々な物売りが訪れました。

今のように人が車で買い物に移動しなかった時代です。

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別れ来し路地に音たててふるみぞれ吾が穿(は)く古き靴に洩りつつ

作者はアララギの歌人、五味保義。

人との別れも路地がその場所でした。

作者のいささか貧しい様子も伝わります。

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パンを焼く家の裏口とおもほえて香ぐはしき午後の路地をとほりぬ

作者は佐藤佐太郎。

佐太郎はごく近所を散歩する時に歌を詠み、『歩道』という歌集を編みました。

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たばこ屋のおばさんがもう泣いている路地より父が運び出される

作者は現代の歌人、藤島秀憲。

2002年「路地生活者」のタイトルの一連で第48回角川短歌賞の佳作を受賞しています。

上の歌は、父上が亡くなった後の様子。作者は長年この路地にある家で、両親の介護に携わり最期を看取りました。

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暑き日のさせる朝戸よ路地の上に青き松の葉散れる静けさ

作者土屋文明。

「朝戸」は「朝、戸を開けて外に出ること。外出すること」を指す言葉。

出勤しようとすると、まだ朝早い道は静かなのでしょう。

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小路の短歌

「路地」だけでなく、「小路」を詠んだ短歌もたくさんあります。

ここからは、路地だけでなく、小路の詠まれた短歌をご紹介します。

ちなみに小路の定義は「町なかの細い道」で、大きな道路を指す大路が対義語です。

草生(お)ふる小路を好み君と行く初恋をする人ならねども

作者は与謝野晶子。40歳の時の歌集『火の鳥』にある歌です。

読みは「コウジ」よりも「こみち」でしょうか。

もちろん初恋のわけではないが、そのような道を選んで君と歩いていくという内容です。

与謝野晶子は生まれは堺。その後は東京に暮らしました。

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みすず刈る南信濃の湯の原は野辺の小路に韮の花さく

作者は伊藤左千夫。

これも読みは「こみち」でしょう。

「朝霜の静けき畑の桑の間ゆ杉の林に小路とほれり」と共に信濃を訪ねた時の情景です。

うつせみの人をははかり吾妹子か里の小路にあをまちおらん

もう一つ、晩年の恋愛の歌。

「あ」は「吾」と書いて「あ」。

婚外恋愛の相手がいたため、その相手が自分を待つ様子を目に浮かべているのです。

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あなあはれ寂しき人ゐ浅草のくらき小路にマッチ擦りたり

作者は斎藤茂吉。 『あらたま』の一首。

人を見ているようですが、あるいは自分自身のことかもしれません。

寺山修司の「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」にやや近いものがあります。

浅草は茂吉の第二の故郷のようなところでした。

他にも

長崎は石だたみ道ヴエネチアの古りし小路のごととこそ聞け
くろき空罎をうづれかく積みし小路のところよりわれ入りて来つ
うすぐらき小路をゆきて人の香をおぼゆるまでに梅雨ふけわたる

 

長き小路あゆみ来りて曲らむと見かへれば蒼し鎌倉の海

作者は窪田空穂。

鎌倉を訪ねた居りの歌。

窪田空穂は路地とその先の我が家の風景を愛着を持ってたくさんの歌に詠んでいます。

目白台北の傾斜の雜司ケ谷細き路地ありその奧に住む

作者は小路の奥に住んでいたようです。

うなだれて来つる小路に籬(まがき)洩りかがやき咲けり山吹の花は

気持ちが沈んだ時にも小路に見える花に慰められます。

この露地の東の果ての曲りかど茂二郞生きてあらはれ来ぬか

作者は2人の子どものうち一人を戦死で亡くしています。

子どもを路地に迎えたことが何度もあったので忘れられないのでしょう。

帰り来し貧しき路地の親しさよ見えぬ笑みあり笑み返さしむ

家の中以上に、路地には常に子の幻影が作者には感じられます。

わが家にも人生(うまれ)れ死に一筋の片岨(かたそば)路地の静かに長き

そして、家と家族の歴史はこの路地と共にある。

家というのが建物のみでなくて、家のある路地の風景と共に捉えられていることがわかります。

路地の歌まとめ

路地や小路、歩道を主題に上のようなたくさんの作品が詠まれています。

どんな家もその家に入るための道路があります。

家のある前の通りはどのような通りでしょうか。

あらためて見直して短歌に詠んでみませんか。

きょうの日めくり短歌は「路地の日」にちなみ、路地や小路の短歌をご紹介しました。

ではまた!

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