君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ
百人一首と古今和歌集の光孝天皇の有名な和歌、代表的な短歌作品の現代語訳と句切れと語句を解説、鑑賞します。
スポンサーリンク
君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ
読み:きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはゆりつつ
光孝天皇(こうこうてんのう)
・百人一首の15番目の歌
・古今和歌集 1-3
現代語訳と意味
あなたに差し上げるために春の野原に出て若菜を摘む私の袖に、雪がしきりに降りかかることです
句切れと表現技法
句切れなし
「つつ」で終わる歌は「つつ止め」と呼ばれる
語と文法
・君がため・・・「君のため」に同じ。「が」は格助詞
・若菜・・・春の初めに芽ばえたばかりの、葉などが食べられる草
・衣手(ころもで)・・・着物の袖。 たもとのこと
・ぬれつつ・・・「つつ」は[接助]動詞・動詞型助動詞の連用形に付く。
スポンサーリンク
解説と鑑賞
光孝天皇が親王(天皇となる前)であったときに、人に若菜を贈ろうとして、この歌を手紙に添えました。
相手にあげようと自ら野原に行って、草を摘む、その時の状況を書き送ったものです。
「雪は降りつつ」から、春の野とはいっても、まだ春浅い季節であることがわかります。
春の野原、青々とした草、雅な着物で草に手を伸ばす作者、そこにはらはらと、春の淡雪がふりかかる、なんともロマンチックな情景を見事に描き出しています。
一首の構成
歌に詠まれているのは、絵画的な光景ですが、歌にする時には、上から下に読む順番に情景が作られていきます。
つまり、春の野原という広い光景から、野の一面に生える草々、さらに、天皇の手というところに視点が集約されていきます。
最後の「つつ」は、「つつ」には「しながら」の意味もありますが、ここでは「しきりに降りかかる」「降りかかってやまない」という意味です。
歌の時間順だと雪は最初から降っていたのではなくて、後から降ってきたように思えます。
31文字の歌の中にも、情景の構成と共に、時間的な展開も含まれるのです。
光孝天皇について
光孝天皇(そうじょうへんじょう)830~887年
日本の第58代天皇(在位:884年2月5日〈元慶8年3月5日〉- 887年9月17日〈仁和3年8月26日〉)。
仁明天皇の第三皇子。