金色のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に 与謝野晶子の教科書掲載の代表的な短歌、この歌の句切れ、倒置と比喩などの表現技法、現代語訳と意味、文法や語句を含めて、鑑賞、解説します。
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金色のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に
読み:こんじきの ちいさきとりの かたち
作者と出典:
与謝野晶子 『みだれ髪』
『みだれ髪』
「みだれ髪」とは
与謝野晶子の第一歌集。1901年,鳳晶子の名で刊行された。与謝野鉄幹の刊行する短歌雑誌《明星》に発表した歌を中心に6章399首を収めた。
その大胆な官能的な表現に満ちた恋愛の歌の数々は、一般的にはさまざまの世評を呼ぶものとなったが、「明星」派の黄金時代を導き、与謝野晶子の名を世に知らしめることになった。
現代語訳と意味:
金色の小さい鳥の形をして、銀杏の葉が散る。夕日が照らす丘に
句切れ
4句切れ
文法と語彙
一首の語彙と文法の解説
「金色の小さき鳥の形して」の比喩
この部分は、銀杏の葉をなぞらえた比喩の部分
・金色の…「こんじき」と読む
・形して…「形を」の「を」の助詞が省略されている
「銀杏ちるなり」
「散る」+「なり」
・「散る」動ラ四
・「なり」…断定の意味の助動詞「…だ」「である」の意味
「夕日の岡に」の倒置
「夕日の岡に」の5句は「なり」の句切れの後に置かれているため、「倒置」という技法になる。
解説と鑑賞
官能的で大胆といわれる『みだれ髪』において、印象的な情景の描写が際立つ、叙景歌。
秋のひかりが差している丘にたつ銀杏の木から、その葉が、はらはらと散っている様子を表す。
その葉の形に注目し、「小さな鳥」のような形である、という比喩が、この歌を際立たせている。
一種の厳かな感じすらするが、「金色」という色、そして、鳥のはばたくような動きと合わせて、静かというだけではなく、晶子特有の、華やかな情景に仕立て上げられている。
銀杏という設定から、季節は秋。銀杏の葉が金色に光り輝くように見えるのは、秋の光が丘に差しているからだろう。
一枚の絵のような情景だが、「散る」と「鳥」から、静止画ではなく、葉に動きがあることが強調されている。
飛んでいる鳥は静止していることがないし、またまっすぐ落ちることはない。銀杏の葉のゆっくりと散るさまが想像される。
教科書の短歌解説 近代歌人の近代歌人の作品/正岡子規斎藤茂吉与謝野晶子
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