向日葵は金の油を身にあびてゆらりと高し日のちひささよ
前田夕暮の歌集『生くる日に』の代表作短歌として知られる有名な歌、教科書にも掲載されている短歌の解説と鑑賞、現代語訳と句切れ、表現技法について記します。
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読み:
ひまわりは きんのあぶらを みにあびて ゆらりとたかし ひのちひささよ
現代語訳と意味
向日葵は金の油のような光を全身に浴びて、ゆらりと背が高い。その上に照る日の小さいものだ
作者と出典
前田夕暮 『生くる日に』
語と修辞法の解説
歌の言葉と修辞法の解説を記します。
この短歌には、多くの修辞法、短歌の表現技法が使われています。
句切れ
4句切れ
比喩(隠喩)
「金の油」は日光の比喩。「~のように」や「~のごとし」を使わない比喩は、隠喩と呼ばれる
擬人法
「身に浴びて」の「身」や「浴びて」は一瞬の擬人法とも言える
「ゆらり」は擬態語、「と」をつけて「高し」にかかる副詞
「よ」は詠嘆の終助詞
「日のちひささよ」の「よ」は詠嘆。
「小さく見えるものだなあ」との意味
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解説と鑑賞
「向日葵は金の油を身にあびてゆらりと高し日のちひささよ」の解説と鑑賞です。
向日葵の背の高さ
夏の強い日差しを「金の油」と表現、その中に立っている、向日葵の背の高さを、「ゆらり」の擬態語ののち、太陽の小ささと対比することによって、「小さいものだあな」と詠嘆して表現します。
「ゆらり」は向日葵の茎の長さと、縦への高さをも表す擬態語で、「高し」は単に物理的な高さを表しますが、「ゆらり」には植物独特のたたずまいが感じられます。
即ち、建物のように堅牢な物の「高さ」ではなく、細い茎ながら、空に向かって細長く伸びていく向日葵の姿が目に浮かびます。
そして、その向日葵の上に見える太陽の光が、向日葵の花の径に比べると小さく見える、そのくらい向日葵が作者の視界に占める割合が大きい。
「高し」だけでも、十分に向日葵の高さ、大きさを表しているわけですが、さらにそこに、「日のちひささよ」ととして主観的な結句をつなげています。
印象派の絵画の影響
この頃の前田夕暮の作風は、その後、ゴッホやゴーギャンなど印象派画家の影響を受けているといわれ、おそらく、ゴッホやゴーギャンの向日葵をモチーフにした絵画に発想を得たものでしょう。
特に、印象派のスタイルの一つに「外光派」と呼ばれるものがあり、夕暮はこのコンセプトを積極的に短歌に取り入れたと思われます。
外光派とは
前田夕暮の他の代表的な作品
木に花咲き木に花咲き君わが妻とならむ日の四月なかなか遠くもあるかな
自然がずんずんからだのからだのなかを通過する--山、山、山