短歌・和歌

木に花咲き君わが妻とならむ日の四月なかなか遠くもあるかな/前田夕暮 解説と鑑賞

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木に花咲き君わが妻とならむ日の四月なかなか遠くもあるかな

前田夕暮の歌集『収穫』で屈指の愛誦歌として知られ、近代の代表歌としても有名なこの歌解説と鑑賞、現代語訳と句切れ、表現技法について記し ます。

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木に花咲き君わが妻とならむ日の四月なかなか遠くもあるかな

読み:
きにはなさき きみわがつまと ならんひの しがつなかなかとおくもあるかな

現代語訳と意味

木に花が咲く頃、君が私の妻となる日のある4月はなかなか先のことで待ち遠しいものだなあ

作者と出典

前田夕暮 『収穫』 1910年

語と文法

・句切れなし

・「木に花咲き」初句6文字の字余り

・「君わがつまと」の「君」の後には、「の」または「が」の主格の助詞が省略されている

・ならむ…なる+む 未来の助動詞

・「君わがつまと」の「君」の後には、「の」または「が」の助詞が省略されている

・「四月なかなか」…「四月」の後には、「の」または「は」の主格の助詞が省略されている

・「かな」は詠嘆の助動詞 「だなあ、であることよ」

 

解説と鑑賞

「木に花咲き君わが妻とならむ日の四月なかなか遠くもあるかな」の解説と鑑賞です。

「君」との婚約中の結婚を待つ心境を詠った明るくみずみずしく、ロマン的な匂いの濃い作品。

『収穫』の中で、屈指の愛唱歌として人口に膾炙、近代の代表歌としても有名なものとなっている。

『収穫』中に見られる恋愛は、別離を詠う悲しいものも多いが、明るい甘美な作品も見られ、この歌はその代表的な作品といえる。

「木に花咲く」の花

四月に花が咲くことをまず述べて、結婚が春であることを示すと同時に、結婚を待ちわびる気持ちを、春を待つ気持ちと重ねている。

「木に花咲く」の花は何だろうか。

四月に咲く花の筆頭は桜であるが、あえて花の名前を出さないことで、具体的な実物イメージさせずに、春とほのぼのとした春を待つ気持ちを表すことに成功している。

また、草花ではなく「木に」咲く花は、強固な枝を持つ、凛としたそして永続するイメージを含んでいる。

「木に花咲き」初句が6文字の効果

結婚までの心境を時間にポイントを絞って表現しており、初句は6文字で「木に花咲き」となだらかな印象を持つ言葉で始まる。

6文字の字余りのため、いかにも時間の流れが緩やかであることを表し、また杓子定規でなく、話しかける言葉のような風情がある。

「君わが妻と」の句またがりの効果

「君わが妻と」は初句の字余りとは一転して、7音に3語が入っている。

「君」は「君がわが妻となる」の助詞があるべきところで助詞が省略されており、自然にそこで小休止を入れて切って読まれるために、「君」と呼びかけている感が生じている。

「(君わが妻と)ならむ日の」は句またがりで、上から一気につながって読まれ、「ならむ日の」では、助動詞のみの後の「日」、つまり、結婚の日とこの歌のポイントである時間が自然と強調されている。

「四月」は句の頭

「四月」は、4句の頭に当たり、「君」に呼応するかのように、ここの助詞も省略されているため、よりはっきりと際立って読まれ、作者強い思い入れを持つ、「四月」が読者にも刻み付けられることとなる。

続く「なかなか遠く」にも句またがりがある。

句またがりと考えられる後の区切りを示すと

木に花咲き/ 君わが妻と/ ならむ日の/ 四月なかなか/ 遠くもあるかな

木に花咲き/ 君/ わが妻とならむ日の/ 四月/ なかなか遠くもあるかな

五七五七七の短歌のリズムと、それとは別のつながりをもつ句またがりがあると、一首はなだらかに均等に詠まれることとなり、定型が普通の文章に近い印象を持つように思われる。

若山牧水のこの歌の評

若山牧水は、前田夕暮のこの歌集収穫について、合評で次のように述べている

『収穫』一巻は一面、君が半生の恋愛史と見ることができる。そして君は日本の恋愛詩の上に一種独特の鮮やかな色彩を投じた。この収穫を重しとする第一義に置く。誰かよく君のごとく冷ややかに自己の恋愛を解剖し得たであろう

前田夕暮プロフィール

1883年生 神奈川県出身。本名洋造。
尾上柴舟に師事。自然主義に与(くみ)し「明星」「スバル」の浪漫主義と対抗。

とはいえ、自然主義小説とは違って、短歌の中にラディカルな試みや、ロマン的な作風を持つものが多くみられる 。
『収穫』第一歌集『収穫』(1910)は同年刊行の若山牧水(ぼくすい)の歌集『別離』とともに一時代を画し、若山牧水と並び称された。
白日社から「詩歌」を創刊し、萩原朔太郎も参加、牧水夕暮時代をつくる。晩年は近代主義を唱え自由律短歌に転じた。

前田夕暮の他の代表的な作品

ひまわりは金の油を身にあびてゆらりと高し日のちひささよ

自然がずんずんからだのからだのなかを通過する--山、山、!

 







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