短歌・和歌

自然がずんずん 体のなかを通過する 山、山、山 前田夕暮の代表作短歌

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「自然がずんずん 体のなかを通過する 山、山、山」 この印象的な短歌の作者は歌人、前田夕暮です。

きょう菜の花忌は、前田夕暮の命日、きょうの日めくり短歌は、前田夕暮の短歌をご紹介します。

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前田夕暮の短歌代表作品

前田夕暮は、明治16年生まれ。

若山牧水とともに自然主義の代表歌人として注目され、「夕暮・牧水時代」と称される時代を築きました。

命日は4月20日で、菜の花忌と呼ばれています。

夕暮には

菜の花の相模の国に鐘のなるあしたを夢はゆきてかへりぬ

の短歌もありますが、忌日の命名は菜の花の短歌からではなく、季節の花から定められた名称だそうです。

前田夕暮の短歌でよく知られた作品、教科書や教材としても採用されているのは下の短歌です。

向日葵は金の油を身にあびてゆらりと高し日のちひささよ

現代語訳と意味

向日葵は金の油のような光を全身に浴びて、ゆらりと背が高い。その上に照る日の小さいものだ

鑑賞

背の高い向日葵のたたずまいを詠んだ歌で、ぎらつく夏の強い日差しを「金の油」という比喩で表現したところにポイントがあります。

向日葵から結句の「日」への以降、そして、向日葵一点から視点の範囲を広げていきながら、大きなものではなくて、逆の「小ささよ」と距離感に焦点を逆転させる発想がおもしろいところです。

 

木に花咲き君わが妻とならむ日の四月なかなか遠くもあるかな

現代語訳と意味

木に花が咲く頃、君が私の妻となる日のある4月はなかなか先のことで待ち遠しいものだなあ

鑑賞

夕暮が妻を迎えようとする時に詠んだ歌。

結婚前の前田夕暮の女性を主題と歌は、アクの強いものが多いのですが、この歌はほのぼのとした雰囲気です。

「木に花咲き」の時の経過を示す初句も独創的であり、「なかなか遠くもあるかな」も結婚を待ちわびる作者の喜ばしい気持ちが表れています。

 

前田夕暮の結婚関連の短歌

妻をめとった後の生活の様子が伝わる作品は以下の通り。

見のこしし夢をいだいて嫁ぎ来し女の夜のうつくしさかな『陰影』

初夏(はつなつ)の雨にぬれたるわが家のしろき名札のさびしかりけり

赤く錆びし小ひさき鍵を袂(たもと)にし妻とあかるき夜の町に行く

曇り日の青草を藉(し)けば冷たかり自愛のこころかなしくもわく

髪をすく汝(な)がゆびさきのうす赤みおびて冬きぬさざん花の咲く

おそろしき人のこころに触れぬやう世のすみに妻よ小鳥飼はまし

わが妻がかけし蒲団の裾赤きあたりを軽くふみてみるかな

自然がずんずん体(からだ)のなかを通過する──山、山、山

前田夕暮が初めて飛行機に乗った感慨を詠んだ一首として、斎藤茂吉の歌と共によく知られています。

昭和4年11月、その頃作られた飛行機、コメット第102号機に、歌人がのせられて、飛行機詠を競詠するという朝日新聞のイベント「空中競詠」で読んだ作品です。

飛行機という現代の最新の乗り物に乗った時の躍動感を表現しています。

一方、斎藤茂吉の方は、怖さが先に出た作品を詠んでいるその違いも、おもしろいところです。

前田夕暮の経歴

前田夕暮

1883年生 神奈川県出身。本名洋造。
尾上柴舟に師事。自然主義に与(くみ)し「明星」「スバル」の浪漫主義と対抗。

とはいえ、自然主義小説とは違って、短歌の中にラディカルな試みや、ロマン的な作風を持つものが多くみられる 。

『収穫』第一歌集『収穫』(1910)は同年刊行の若山牧水(ぼくすい)の歌集『別離』とともに一時代を画し、若山牧水と並び称された。

白日社から「詩歌」を創刊し、萩原朔太郎も参加、牧水夕暮時代をつくる。晩年は近代主義を唱え自由律短歌に転じた。―「コトバンク」他より

 

きょうの日めくり短歌は「菜の花忌」にちなみ、前田夕暮の短歌をご紹介しました。

・日めくり短歌一覧はこちらから→日めくり短歌

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