「字あまり」「字足らず」「句割れ」「句またがり」の短歌の技法についての解説です。
「韻律から短歌の本質を問う」に掲載の短歌を元に解説します。
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字余りとは
短歌の字余りとは五音が六音以上になったり、七音が八音以上になったりして、定めの字数より多いことをいいます。
字余りの例
初句が6音で字余りです。
歌の意味:
わたしのこころよ。夕方になると、ろうそくに火が点くようにひもじいのだなあ
効果:
ここでは、歌に重みを付けてゆったりした調べを作りだすために、敢えて「よ」を添えたのだと思われます。
字足らずとは
5音、あるいは7音と定められた字数よりも少なくなったものをいいます。
字足らずの例
初句が「かとの」の3音で字足らず。また結句の「生まれてみよ」は、7音に1字足りない6音で字足らずです。
歌の意味:
おたまじゃくしの卵に春の光がさしている。生まれたければ生まれてみなさい。
効果:
感情が激した時、人は言葉に詰まり、一首の吃音状態になることがある、字足らずはそんな印象を読者に与えます。
句またがりとは
句またがりとは、文節の終わりと句の切れ目が合致しないことをいいます。
句またがりの例
「無人郵便局」は一つの言葉ですが、2句目が「無人郵便」までで7文字、3句目に「局」が続く句またがりです。
もうひとつ、「うすみどり」は、4句目の終わりに「頼信紙のうす」までで、結句に「みどり」が続き、この箇所も句またがりとなっています。
効果:
句割れ、句またがりは、どちらも定型の予定調和を崩して別のリズムを作り出す働きがあり、この歌においては、それらが意識的にもちいられて定型を崩したものとなっています。
歌の意味:
今日カフカ忌の無人の郵便局に、日に焼けて色あせて薄みどりとなった頼信紙の格子(を見る)
句割れとは
句割れとは、句の終わりでないところで、文が終結していることをいいます。
句割れの例
4句目の「なかりけん/されど」は、「なかりけん」の「けん」は終止形なので、ここが分の終わり。
同じ4句目で「されど」となるため、ひとつの句に文が2つある句割れです。
また2句目の「このほかに道/なかりしか」は「道なかりしか」が2つの句に続くことになる、句またがりです。
効果:
句割れ、句またがりは、定型の予定調和を崩して別のリズムを作り出す働きがあります。
整わずに思ったことが次々と出てくるような心の動きをそのままに表し、結句「ふいの虹たつ」の定型7字でぴったりと終えることで、印象的な終わり方となっています。
それが作者自らの人生の結論なのでしょう。
歌の意味:
私の一生はこのほかに道はなかったのだろうか。なかったのだろう。けれども不意に虹が立つ(かのようなことが様々あった)