本・歌集 石川啄木

枡野浩一さんの訳した石川啄木の短歌『石川くん』

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歌人の枡野浩一さんが、石川啄木の短歌をおもしろく訳した本があると知って、見てみました。

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枡野浩一の訳した石川啄木の短歌

本のタイトルは『石川くん』。
ネット上の「ほぼ日刊イトイ新聞」に連載した短歌とエッセイが集められて書籍化されたものです。

枡野さんの啄木の現代語訳

枡野さんの現代語訳とは、次のようなものです。
一番人気の歌とその訳はというと

原文
一度でも我に頭を下げさせし
人みな死ねと
いのりてしこと

マスノ訳
一度でも俺に頭を下げさせた
やつら全員
死にますように

この訳に関しては、とてもおもしろいのだけれども、もう少し正確なことを言うと、「祈りてしこと」というのは、「死にますように」ではなくて、「祈ったこと」となって、そこで終わっているので、今祈っているというのとは、ニュアンスとしても違いがあります。

なので、脚色を経ている枡野訳の方が、はるかにインパクトが強いですね。

 

パロディーということ

しかし、枡野訳だけを見て、おもしろいかどうかというと、それ自体ではどうということではなくて、これはやはり啄木の元の歌と対照することによって、はじめて生まれてくるおもしろさだということに気が付きはしないでしょうか。

パロディーということはそういうことで、元々のものを知らないと、パロディーは楽しめない。パロディーの可笑しさは、逸脱が起こるその瞬間に居合わせることのおもしろさなのでしょう。

そしてこの場合、そのおもしろさは、訳そのものがどうかよりも、やはり、啄木の元々の歌の突飛さにあるのだろうと思います。

『一握の砂』の3日間に100首

人には誰も弱点がありますが、その弱点を生かすことができるというのが才のある人の常です。普通の人なら躊躇するようなことや、容易に揶揄や非難をされると思えるようなことも、啄木は真面目に書いています。

そのままなら、へらずぐちや愚痴に過ぎないようなものも、とにかく歌に仕立て上げる。わずか3日間に百数十首というのですから、すごいものです。

そういう作り方をする場合は、あまり細かくかまっていられない。題材になるものなら、どんなことでも逃さずに作るしかない。

そのためには、自分のどのような心の動きであっても良しとして題材に据える。これも、啄木に並外れた強い自己愛があったからこそのことだと思います。

それが「不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて空に吸はれし十五の心」「たはむれに母を背負ひてそのあまり軽きに泣きて三歩あゆまず」のような抒情と矛盾なく同居している。それもまた複雑な人の心の真実であり、啄木の歌はそれをそのままに映し出してもいるのです。

短歌というのは、そういうありのままの自分が表れるもの、偽りを許さないものでもあるということに気が付くことができるのも、また啄木の歌なのかもしれません。

『石川くん』紹介文

「啄木の短歌は、とんでもない!」と糸井重里さんも驚嘆。親孝行で清貧という石川啄木のイメージは大誤解だった!?本当は仕事をサボって友達に借金をしては女の人と...。そんなサイテーな、だけど憎めない「石川くん」をユーモラスに描いた爆笑エッセイ集。“一度でも俺に頭を下げさせた/やつら全員/死にますように”など、啄木の短歌には衝撃の現代語訳つき。朝倉世界一の可愛いイラストも満載。

 

過去記事だけなら、「ほぼ日」サイトのこちらでも読めます。
でも、本だけにあるこのイラストもいいですね。

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