教科書の短歌

何となく君に待たるるここちして出でし花野に夕月夜かな 与謝野晶子表現技法

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「何となく君に待たるるここちして出でし花野に夕月夜かな」

与謝野晶子の有名な短歌代表作品の現代語訳と意味、句切れと修辞、文法や表現技法などについて解説、鑑賞します。

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何となく君に待たるるここちして出でし花野に夕月夜かな

読み:なにとなく きみにまたるる ここちして いでしはなのに ゆうづきよかな

作者と出典

与謝野晶子『みだれ髪』

現代語訳

何となくあなたが待っているような気がして、秋の花が咲き乱れる野に出てみたら、月が夜空に浮かんでいた

教科書掲載の短歌一覧
教科書の短歌/中学校教材に収録の近代歌人の作品/正岡子規斎藤茂吉若山牧水石川啄木与謝野晶子

文法解説

・この短歌に句切れはないので、句切れなし

・「何となく」の読みは、「なにとなく」

・「出でし」の「し」の基本形は過去を表す「き」
「し」は連用形。「出た先の花の野」の意味。

・「花野」…野原に花の咲いているところ
古くから多くは、秋の野の意味。

・夕月…夕方の空に見える月

・「かな」は詠嘆の助詞

表現技法

・結句の「かな」は助詞、体言止めにせず「かな」をつけて終わる余韻を出している

・初句「何となく」は「ここちして」を修飾するが、具体的な言葉ではなく、気分を表すためで、淡い印象をもって一首を始めている

・「花野」「夕月夜」など、古典的で女性的な言葉が散りばめられている




解説と鑑賞

相聞の短歌。相聞というのは、「恋愛の歌」のことであって、一首は、女性である作者のの相手に会いたい気持ちを表している。

「何となく」というのは、故由もなく、理由もなく、の意味で、相手に実際に呼ばれているわけではないのだが、作者自身の、思慕の念、相手に会いたい気持ちを、受身形で「待たるるここち」と表していることに注意。

「待たるる」は「待たれる」の意味だが、「待たるる」と受け身で表すことであって、この時代の女性らしさが出ている。

「るる」連用形の言葉の音が美しく、たとえば「君に会いたきここちして」であるよりも、ずっと音が美しく、この言葉が選択されたと思われる。

「花野」は古い短歌ではよくつかわれる言葉で、多くは秋の野を指し、和歌で使われる秋の花は、萩などの繊細な花が多い。そのような清澄な美しさを含むイメージでもある。

「夕月」は夕方早く出る月のことで、あたりはまだ光が残っており、花の影もおぼろに見える。そのような中に立つ女性の影もまた美しくイメージされるであろう。

与謝野晶子は実際にはもっと行動的な女性であったと思われ、「狂ひの子われにほのほはねかろき百三十里あわただしの旅」など、相手に待たれるどころか、会いに行こうとする歌もある。

この歌は、それに比べると、もっとほのかな女性の恋心を受け身で歌うというものであり、広く好まれるものとなっている。





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